2020/09/18

たまには体のお話を

 皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

 今回は、『日本人の「体質」』(奥田昌子著、講談社)という本をご紹介し、現在の精神科の課題についても少し触れたいと思います。

 この本は、①骨を強くするために牛乳や乳製品をつとめて摂取している ②筋肉をつけて基礎代謝を上げるため、ジムに通い始めた ③糖尿病予防やダイエットのために炭水化物(糖質)をひかえている、といったことはすべて<まちがいである>と指摘しています。

 その理由をかいつまんで説明します。

 まず①について。
 骨粗鬆症はそもそも遺伝性が強い(アメリカ人は日本人より牛乳を2倍摂取しているが、骨粗鬆症は日本人の2倍)。46件の研究を分析したところ、カルシウムの摂取量と骨折には関連性がなかった等としたことが書かれています。

 ちなみに著者は、「無理に乳製品からカルシウムを摂ろうとしなくてよい」と主張しているのであって、海藻や緑黄色野菜、大豆や小魚など、古来の日本食からカルシウムを摂取することに反対しているわけではありません。その点、曲解しないようにしたいと思います。

 次に②について。
 これについても誤った解釈をしないよう注意が必要です。著者は、「ジムに通うことに意味がない」と言っているわけではありません。ジムに行って体を動かせば、気分も晴れますし、運動不足の解消にもつながります。著者がいいたいのは、「筋トレはやせることにあまりつながらない」ということです。

 筋肉は赤筋と白筋からなります。鍛えることで太くなるのは大部分が白筋です。日本人は体質的に白筋が少なく、鍛えても簡単に増やすことができません。仮にどうにか増やせたとしても、そのことでたいして基礎代謝量は増えません。だから筋トレはダイエットにはつながらないというわけです。

 最後に③についてです。
 日本人、特に日本人男性は、内臓脂肪がつきやすく、そこから分泌されるTNF-α(サイトカインの一種)がインスリンの効きめを悪くするそうです。

 つまり糖尿病を引き起こす大きな原因はたまった内臓脂肪にあるというわけです。そのため、内臓脂肪を増やさないよう、脂肪(脂質)の摂取量を減らし、こまめに体を動かすことが大事、と著者は説きます。

 また日本人の場合、炭水化物の摂取量を減らすのは大問題だそうです。日本人は欧米人と比較してインスリンの分泌量が少ないため、摂取する炭水化物が少なければ、ブドウ糖を十分確保できません。そのため、膵臓は無理をしてインスリンを分泌しようとします。それが続くと、膵臓は疲弊し働きが悪くなります。これが、さほど太っていなくても糖尿病になってしまう原因とのことです。(注:勿論、炭水化物の摂り過ぎもよくないことです)

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 統合失調症になった人の寿命は、一般人口と比較して10~20年短いといわれています。

 デンマークの全国調査では、一般人口と統合失調症患者さんの寿命の差は11.2年でした。また、一般人口の寿命は1980年から2010年にかけて延び続けていますが、統合失調症の患者さんは伸びていません。こうした差は、統合失調症の患者さんにおいて身体的なケアが不足しているからとされています。

 日本の場合、罹患した病気や受けた医療等、色んな情報が入った「マイナンバー」のようなものがないため、統合失調症患者さんの正確な寿命は分かりません。しかし、いくつか行われた比較的小規模な研究によると、統合失調症患者さんの寿命は、やはり一般人口より短いとされています。

 勿論、その要因は複合しています。統合失調症の患者さんの中には、自身の身体的問題に関心が乏しかったり、不調を感じても病院を受診しなかったりする人がいます。また、精神疾患が重篤だと、術後管理の面などから、侵襲的な検査や手術が避けられがちです。

 なお、外来では太った患者さんをよく見かけます。肥満になれば、当然、生活習慣病にかかりやすく、その結果寿命を縮めます。改善策としては、こまめに体重を測定し、それを話題にすることや、血液検査の回数を増やして、コレステロールや血糖値について、もっと関心を持ってもらうこと等があげられます。

 精神科病院の医療体制を充実させることも重要です。あまり知られていないことですが、「精神科特例」という規定があります。国が定めた規定です。それによると、精神科の病院は、他の病院と比較して、入院患者数に対し医師は3分の1、看護師は半分で良いとされています。そう聞くと、「増やしてダメなわけじゃないんだから、ドンドン雇用すればいいじゃない」と考える人もいるかもしれません。しかし、実際はそうではありません。その程度の配置しかできないほど、精神科の医療費が抑えられているのです。

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 病気を知ることも大事ですが、病気を予防するための知識を得ておくことも重要です。手始めに、今回ご紹介した『日本人の「体質」』を手に取ってみてはいかがでしょう。

令和2年9月18日
院長 松本康宏