2019/10/11

依存症

 秋たけなわの今日この頃、皆様、いかがお過ごしでしょうか。

 今回は依存症と映画の話です。

 『アンタッチャブル』。私は若い頃、この映画を繰り返し観ていました。俳優陣はケビン・コスナー、ショーン・コネリー、アンディ・ガルシア、ロバート・デ・ニーロといった錚々たる面子。中でも一番映えていたのがショーン・コネリーです。映画の舞台は禁酒法時代のシカゴ。当時のシカゴは、マフィアのボス、アルカポネに牛耳られていました。その資金源がアルコールの密売です。映画はアルカポネに有罪の判決が下され幕を閉じますが、禁酒法自体は失敗に終わりました。アルコールの消費量は減らず、マフィアを肥えさせるだけの結果に終わったのです。

 この映画を観て、アルコールに関して幾つか思うことがあります。一つは、法律で許可するかどうかの判断は、健康面に及ぼす影響だけではないということ(医学的にみて、アルコールは決して安全な物質ではありません)。もう一つは法律で認められているが故に誘惑の多い物質であるということ。テレビを付ければ、しょっちゅう、宣伝を目にし、コンビニやスーパーに行けばすぐ手に入るのがアルコールです。断酒している人にとっては再使用のきっかけに囲まれて生活をしているといっても過言ではないでしょう。

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 もう一つ映画を紹介いたします。先日、観た『ベン・イズ・バック』です。これは見ごたえのある作品でした。主役は薬物依存症になった息子(ベン)と息子の更生を願う母(ホリー)。ベンを演じるのはルーカス・ヘッジス、母がジュリア・ロバーツです。サスペンス風にデフォルメされているところもありますが、基本的にはシリアスかつリアルな作りです。

 ベンはスノーボードで怪我をし、かかりつけの医者から痛み止めの薬をもらいます。それが依存症の始まり。薬がやめられなくなって、さらに安価で危険な薬物に手を染めます。薬を入手するためか売人にもなりました。そして今は治療施設の中。その彼が突如クリスマスイブに姿を見せます。ベンの継父や妹は受け入れに反対しますが、母はベンと行動を伴にします。その結果、事件が続出、すさまじいクリスマスが展開されます。

 米国ではオピオイド系鎮痛剤の依存が社会問題となっています。罹患している人は数百万人。この薬は耐性ができやすく、その結果、使用量が増え、大量摂取して亡くなる人が後を絶ちません。確かに痛みのコントロールは大事です。特にアメリカでは、ずいぶん前から、その必要性が叫ばれてきました。「ケガの手当てをしたり、二次感染を防ぐだけでなく、痛みを取り除いて初めて医療」、そう考えられてきたのです。しかし、その過程で用いられたオピオイドがやっかいな副作用をもたらしました。予想以上に依存性が強かったのです。

 映画の中での一コマ。クリスマスということもあって、ベンと母はショッピングモールに出掛けます。そこで母はベンのかつての主治医と遭遇。静かな口調で話しかけます。「あなたに診てもらっていたベンを覚えていますか」。その医者は覚えていないのか、とぼけているのか、はっきりと返事をしません。母は冷ややかに伝えます、「スノーボードでケガをした際、あなたが出した薬で依存症になったベンですよ」と。最後は「あなたはこの薬を使っても大丈夫だといいましたよね」、「死んじまえ」といった言葉。医者の私にはドキッとするシーンです。

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 最近、依存症に対する取り組みが変わりつつあります。これまでの精神科医療は依存症に対して無力でした。貢献してきたとはとてもいえません。私も依存症を避けていました。しかし今一度、新しいアプローチを用いてスタッフと一緒に挑戦しようと考えています。

 10月から毎週、依存症のミーティングを開いています。名前は『SUNミーティング』。「賢くなる」「つながる」「長生きする」、この3つが会の柱です。関心を持たれた方は医療相談室にお問い合わせ下さい。

令和1年10月11日 院長 松本康宏