2021/06/23

無意識の活用

 みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

 夏が近づいて来ました。私は時々、キス釣りに出かけています。個人的には、海中で魚がエサに集まっている姿を想像しているのが好きです。

 また、精神科医だからかもしれません。魚が陸に姿を現す様は、「無意識」に潜んでいた気持ちが、「意識化」される現象と似ているような気がします。

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 「無意識」というと、いかがわしく思われる方もいらっしゃることでしょう。しかし、その存在は脳科学でも証明されています。

 コップの水を飲もうとした際の意識の在り方について想像してみて下さい。普通は、コップの水を飲もうと意識してから、脳が準備をして、コップに手をやるといった順番だと思いがちです。しかし、実際は違います。水を飲もうと意識するほんの少し前から、脳はその準備を(無意識に)始めているのです。

 これは考えてみれば、それほど不思議なことではありません。人は行動を起こす前に、「なんか嫌だ」とか「なんとなく面白そう!」と、感じ取っています。その感覚を基に感情が派生し、最終的には理性も含めて、やるかやらないかの判断をしているのです。

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 先日、『Sunミーティング』で、<再発を防ぐには>という回を担当しました。依存症は、「トリガー」と接したことで激しい「欲求」が生じ、再使用に至ります。一般の感覚では、再使用した時点を「再発」と考えます。しかし、依存症の領域における「再発」は異なります。
<使用していなくても、使用している時と“似た行動”や“似た気持ち”になっている時> その時点が「再発」です。

 確かに、後で振り返ってみると、再使用の前には、何らかのサインが出ていたことがほとんどです。「ミーティングに定期的に参加していたのに、なぜか理由をつけて休むようになった」とか、「当時、どういうわけか細かいことにこだわってイライラしていた」等です。

 こういった「事前のサイン」に気付くことは、再発を防ぐ上で極めて重要です。ただ、これは簡単なことではありません。なぜなら再発の兆候は、そのほとんどが「無意識」だからです。

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 一方、「意識」の方も重要です。

 例えるなら意識はリーダー、無意識は大衆です。リーダーは基本的に大衆の意向に沿いますが、それがおかしな場合には、あれこれ手を打って、正しい方向に導こうとします。<再発のサインに気付き、適切に対処する>のもその一つです。

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 「無意識」の活用に関しては、次のようなことも覚えておいて損はしないかもしれません。

(患者さんであれ、生徒であれ、職場の同僚であれ)難しい人と関わると、「この人は、どういう人なのだろう」「この人は、何を考えているのだろう」「次は何をするのだろう」・・・、そういったことばかり考えてしまいます。しかし、そんな時こそ、自分の気持ちを見つめてみるのです。

 「自分はどうして、その人のことが、そんなに気になるのか」、そう考えてみると、これまでとは違った理解が得られます。

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 以上、無意識に<気づくこと>の重要性について記してきました。一方で、無意識を<整えておくこと>も大事です。むしろそちらの方が取り組みやすいかもしれません。具体的には、リラックス法やマインドフルネスの活用です。

 当院も、依存症の患者さんを対象に「マインドフルネス」をおこなっています。関心を持たれた方は、医療相談室までお問い合わせ下さい。

令和3年6月23日
院長 松本康宏