2022/08/01

映画を早送り?

 みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

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 先日、『トップガン マーヴェリック』を観に行きました。これは36年前に公開された『トップガン』の続編。今回、この映画を観ながら昔のことを思い出していました。

 若い頃、知人宅に行くと、『トップガン』のビデオが置いてありました。私はそれを貸してもらい、しばらく返さずにいました。ある時、どんくさいことに、知人から借りていたそのビデオとビデオ屋から別に借りてきたビデオを、二つともビデオ屋に返そうとしてしまいました。店員は、返却されたビデオが期日を過ぎていないかチェックします。店員は『トップガン』を手にして、こういいました。「これは盗品です!」

 一瞬何が起きたのか分かりませんでした。その後、どうにか言い訳をして、許してもらいましたが、冷や汗ものの出来事でした。

 もう一つ思い出したのは、こんなエピソードです。

 今回の映画には、トム・クルーズの相手役として、ジェニファー・コネリーがでてきます。私は昔、彼女が若い頃に主演した『魔王の迷宮』という映画を観たことがあります。場所は難波の映画館でした。内容はつまらないものでしたが、帰り道はよく覚えています。一緒に行った先輩と、難波から梅田まで歩くことになり、その際に、大阪の問屋街を通りました。そこは見たことのない町並み。それが映画に付随した思い出となっています。

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 最近、映画を早送りで見る人が増えているそうです。

 映画を早送りで見るのは、確かに効率的かもしれません。しかし、思い出にはならないでしょう。

 時間の使い方とは、究極的にいうと、「人生の使い方」です。だから、効率を求めすぎて、記憶に残らなければ、人生という観点では、時間を効率的に使ったことにはなりません。

 実をいうと、今回のブログで、そういったことを書くつもりでした。しかし、『映画を早送りで観る人たち』(光文社新書)を読んで私の考えは変わります。

 本によると、今の大学生は、昔と比べて、極めて経済的に苦しいそうです。具体的には、仕送り額から住居費を引いたあとの金額が30年前は7万円程度あったのに対し、今は2万円を切っています。

 なお現在の学生は昔と比べると出席が極めて厳しいそうです。だから、夕方までびっちり授業を受けて、その後バイトをし、残った時間をネットにあてたりしているのでしょう。そう考えると、映画を倍速で見るのも不思議なことではありません。

 冒頭で、人生は思い出作り、だから、映画を倍速なんかで見ない方がいい、といったことを書きましたが、主張を変えます。

 バイトだって、映画に勝るとも劣らない、貴重な体験。映画を倍速で見てでも、学業とバイトを両立させて欲しい、そう考えています。

令和4年8月1日
院長 松本康宏

 追伸:現在、精神科の流れは、弱者の救済から自立支援、そして総合支援へと向かっています。総合支援の「総合」とは、いわば誰もが豊かな人生を送ること。私たちもその点を踏まえて、いろんなことを始めようとしています。

 来月からは、臨床心理士を中心に、認知行動療法とマインドフルネスの講座を開始します。また『はたらく前に』と表して、就労支援プログラムも始めます。興味をもたれた方は、当院医療相談室にお問い合わせ下さい。