2021/04/02

パラドックス

 皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

 4月1日、入社式が行われました。その際、お話した内容を少しご紹介いたします。

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 まず、はじめに「ひきこもり」の話から。

 「ひきこもり」というと、20数年前は、若者の病理(問題)と考えられていました。それから、時間が経ち、最近になって出てきたのが「8050問題」です。これは、ご存知のとおり、引きこもった子どもが50代、それを支える親が80代になった現象を示しています。

 ひきこもっている人たちは、その特徴上、積極的に助けを求めたりはしません。そのため、親がいなくなれば、最悪、餓死ということもありえます。それが8050問題の深刻さです。

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 ひきこもりに関する全国調査が行われたのは、意外と最近の話です。

 それによると、115万人くらいの人が現在ひきこもっているとのこと。内訳は、15歳から39歳までが54万人。40歳から64歳までが61万人。つまり広い年齢層に渡っていることが分かります。なお、引きこもりを呈している人の中には、就労経験のある人は勿論のこと、長期間働いていた人や定年後にひきこもった人もいます。このようにひきこもりは、不登校から始まるパターンだけではないことが、今回の調査で判明いたしました。

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 ひきこもりの人たちは、最も「自由」な生活を送りながら、最も「不自由」な人と評されます。

 確かに、ひきこもれば、わずらわしい人間関係からは逃れられます。何もしなくても、親が面倒をみてくれるかもしれません。いわば王様に近い生活。しかし、気持ちは「不自由」です。

 それはどうしてでしょう。

 それはやはり「自尊心」の問題ではないでしょうか。私が思うに、自尊心には2種類あると思います。一つは内側からくる自尊心。もう一つは外側からくる自尊心です。内側の自尊心は、子どもの頃から培ってきたもの。大切にされた体験に由来します。外側の自尊心は、社会から認められ、かつ期待されることで得られる自尊心。

 人はこの二つの自尊心で「自分」を支えています。しかし、ひきこもると、特に外側の自尊心が保てません。その結果、自分が不安定になります。にもかかわらず動けない状態。それが、ひきこもりの「不自由さ」だと思います。

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 次に「働き方」について。これは医者の世界を参考にします。

 若い頃は、とにもかくにも仕事を覚えないといけません。だから、それなりにみんな仕事に向き合っています。それが40代くらいになると、仕事をする人としない人に分かれてきます。

 医者の「働き方」を観察していると、20%くらいの人が仕事熱心、60%くらいの人がまあまあ、残りの20%くらいが意欲を失った人、だいたいそんな構成です(『働きアリの法則』と同じ)。

 医者の場合、やる気さえあれば、仕事がなくなることはありません。むしろどんどん増えてきます。中には「こんなに働いて、大丈夫かな」と心配になる人もいます。そういった人たちは、「フーフー」いいながら働いていますが、不満は述べません。また、やりがいを感じているせいか、常に“いきいき”しています。

 一方、意欲を失った医者たちはというと・・・。いつも気難しい感じで、“ふてくされた感”が漂っています。つまり、気持ち的には楽じゃないのです。本来であれば、仕事が少ない分、楽なはずですが、不思議な現象です。

 さてここで思い出すことはないでしょうか・・・。そうです。ひきこもりで見られた「パラドックス」です。「ひきこもり」と「働き方」、この両者で見られたパラドックスは「相似形」になっているのです。

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 長い人生。自分の働き方に疑問を抱いた時には、「自由は自由じゃない」「楽は楽じゃない」という法則を思い出してみるのも悪くないかもしれません。

令和3年4月2日
院長 松本康宏