2020/10/12

予想がつかないこと

 皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

 秋になりました。<色彩>のきれいな季節です。

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 10月11日、『東北精神神経学会』に参加しました。今回、座長も務めました。私が担当した発表は以下の4つです。

 1.向精神薬により重症の薬疹が生じたケース
 2.SSRI(抗うつ薬の一種)で音楽性の幻聴が生じたケース
 3.持効性注射剤(一回注射をすると2週間とか4週間効果が持続する注射)を用いたところ社会参加が可能になったケース
 4.オランザピンを服用してけいれん発作が生じたケース

 普段なら何気なく発表を聞いているだけですが、座長をするとなると質問をしなければなりません。そこで今回はあらかじめ抄録を読んで学会に臨むことにいたしました。

 読書家の中には「文章は行間を読むのが大事」という人がいます。「作者は自分が言いたいことの100分の1も文章にできていない」「だから、読者の方が文章から作者の思考を推察する必要がある」というのです。それを聞いた時は半信半疑でした。しかし、今回、時間をかけて抄録に目を通していると、発表者の苦労が浮かんでくるようで「行間を読む」というのが少しだけ分かったような気がいたしました。

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 先日、『Google Scholar』というものの存在を知りました。試しに自分の名前を入れてみると、自分の論文がそれなりに引用されています。これにはちょっと驚きました。

 私が書いた英語の論文は2つしかありません。それも指導して頂いた先生にほとんど書いてもらったようなものです。だから偉そうなことは言えませんが、論文を一本書き上げるには大変な労力を要します。

 100以上文献を読み、その中から参考になるものを選んで、それを用いて論旨を組み立てます。伝えたいことを英語にするのも思うようにいきません。それ故、完成した際の喜びは格別です。

 『Google Scholar』を利用した時、ある作家が次のように言っていたのを思い出しました。<自分が死んだ後も「作品」が世に残ると思うと、我が子を残すようで嬉しい>といったことです。「へぇー、そんなもんかな~」とその時は受け流していましたが、確かに自分の論文が誰かの役に立っていると思うと嬉しくはなります。

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 話を学会に戻します。『東北精神神経学会』では、私も一度発表したことがあります。場所は弘前でした。タイトルは『抗精神病薬により偶発性低体温症をきたした3症例』。

 当直をしていた時に、ふと「普段と何か違うことをしたいなぁ」「そうだ!学会で発表してみよう」と思い立ったのです。すぐに作成に取りかかり、内容はともかくとして、あっという間に仕上げてしまいました。

 発表当日、意外に反響がありました。聴いている人にとって、とっつきやすい話だったのでしょう。発表後も、わざわざ感想を伝えに来てくれる人がいて嬉しくなりました。

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 見知らぬ人の前で発表をするには、勇気がいります。うまくいくかどうか予想がつきません。しかし、予想がつかないことをしてみると「思い出」にはなります。人生を紅葉のように彩るには、「思い出」が不可欠。きっと今回発表された方々も人生に<彩>を添えられたことでしょう。

令和2年10月12日
院長 松本康宏