2020/10/30

依存症その1

 皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

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 ここのところ、依存症の<考え方・関わり方>が変わってきています。

 「依存症は叱っても治りません」。ではどうすれば良いのか?そのことについて、このブログで3回に渡ってご説明いたします。今回は《その1》。

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 依存症とは、「コントロール障害」です。自分の意志では、量、時間、場所といったものが守れなくなります。例えば、アルコールでいうと、倒れるまで飲んでしまうとか、朝から飲んでしまうとか、職場でも飲んでしまうなどです。

 依存症の勉強を始めると、「アディクション」とか「嗜癖」という言葉に出くわします。これらを厳密に使い分ける必要はありません。同じものと考えて頂いて結構です。

 ご存知のように、依存対象はアルコールに限りません。ただ医療で一番遭遇しやすいのは、「アルコール依存症」。体を壊すことが多いため、病院と結びつきやすいのでしょう。

 酒は「百薬の長」ともいわれますが、実はかなり有害な物質です。どのように有害かというと、①体を壊す ②人間関係(家庭)を壊す ③自殺を増やす、この3つです。

 自殺の多くは経済苦、病気、離婚、うつなどが複雑に絡み合って起こります。ただ、男性の場合は特に、上記の要因に加えて、アルコールが関係していることが少なくありません。だからアルコールの問題を回避すると自殺も減少するはずです。

 覚えておいて欲しいことがあります。ひどく落ち込んでいる同僚や部下がいた時に酒を飲みながら励ますようなことは避けて欲しいということです。酒は抜けてきた頃に“抑うつ”が強まります。飲んでいる最中は、「明日から頑張ります!」等と言っていた人が、自宅に戻った後、途中で目が覚めて自死してしまう、そんな話も耳にします。深刻そうな場合には、酒を入れずに話を聞いてあげた方が無難でしょう。

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 一方、アルコールは人々に恩恵ももたらしてきました。だからこそこれだけ普及しているわけです。しかし、体質などのせいで一部の人が依存症に陥ってしまいます。

 体質というと、飲める・飲めないだけでなく、「酩酊の仕方」をみておくことが重要です。

 世の中には酒乱になりやすい人がいます。普段はおとなしいのですが、酒が入ると人が変わり、粗暴になって周囲を困らせます。しかし、酒が抜けるとシュンとしています。こういう人を初めて見ると、その変わりように驚くと同時に、「これは育ちというより体質だな」ということが分かります。

 アルコール依存というと毎日大量に飲酒している人をイメージされるかもしれません。しかし、必ずしもそういう人ばかりではありません。毎日飲まなくとも、あるいはそう大した量を飲んでいなくとも、飲めば大抵、見境なし。そういった人は依存症と考えてよいでしょう。

 日本はお酒にあまい国です。だから若い頃は、酒を飲んで乱れても大抵は許されます。しかし、年を取っても飲み方が変わらなければ、社会から孤立していきます。依存症は当然、早期治療が大事。だから自分が酒を飲むとどうなるのか、それを若いうちに把握しておくのは重要です。

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 一方、依存症に陥るパターンは十人十色です。

 夫の転勤で見知らぬ土地に来た主婦が日中寂しくて酒を飲むようになったとか、離婚したくても別れられない事情があり、多量飲酒を繰り返してしまうとか、仕事を辞めてから酒量が増したとか、その人によって事情や状況が異なります。

 それ故、ミーティングだけでなく、個別の精神療法(カウンセリング)も必要です。

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 「人は何かに酔って生きている」、誰かがそんなことを言っていました。そんなにカッコいいものではありませんが、依存対象が世の中にあふれているのも事実です。

 すぐ思いつくのは、たばこ(ニコチン)。私も20年吸っていました。その間、何度も禁煙を試みましたが、全て失敗に終わっています。最終的には咳がとまらなくなり、ようやく止めることができました。アルコールであれタバコであれ、一旦止めるのはそう難しいことではありません。しかし、止め続けるのは大変です。私にとっての鬼門は出張先でした。自宅から離れて一人でいると、「今日だけは吸ってもいいかな」「秋田に戻ったらまた止めればいいや」とした考えが浮かんでくるのです。

 ギャンブル依存もたくさん見かけます。日本だと一番身近な賭け事はパチンコでしょう。しかしどういうわけか政府は、「パチンコは、(ギャンブルというより)娯楽」といった姿勢を取り続けてきました。昨今、IR法を通す上で、ようやくギャンブル依存の対策に重い腰を上げたというのが実情です。

 他にも買い物依存やワーカーホリックもそうですし、意外に思われるかもしれませんが、過食嘔吐や手首自傷も繰り返し行われていれば、依存症と考えられます。<続く>

 紙幅の都合で、次回のブログ(11月6日)に続きを載せます。

令和2年10月30日
院長 松本康宏

<参考>
『アルコール依存症治療革命』成瀬暢也著 中外医学社
『薬物依存症』松本俊彦著 ちくま新書