2021/12/01

刑法第三十九条

 みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

 今回は、『39 刑法第三十九条』という映画の話です。1999年の制作。決して新しい映画ではありません。先日、新聞で紹介されていたことから、思い出して、もう一度鑑賞した次第です。

 タイトルが示す通り、この映画は、刑法三十九条を扱った「人間ドラマ」。刑法三十九条とは、<心神喪失者の行為は罰しない。心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する>というものです。

 では、あらすじからお話しさせて下さい。

 猟奇的な殺人事件が起こります。被害者は、身重の女性とその夫。犯人の確保に時間はかかりませんでした。役者をしていた柴田(堤真一)です。しかし裁判が始まると、柴田はおかしなことを述べ始めます。それをみた弁護人が精神鑑定を要求。早速、教授と助手で鑑定が行われます。教授は、柴田の様相から、多重人格と診断。責任能力はないと考えます。しかし、助手をしていた小川(鈴木京香)の意見は違いました。

 検察は小川の意見を受け入れ、再鑑定を命じます。鑑定が進められる中、様々な事実が判明してきます。まず、殺された男は、少年時代、少女を殺害した過去がありました。しかし、法に守られて、無罪になっていたのです。一方、犯人の柴田も、本当は別名の人物でした。殺された少女の兄、西田だったのです。

 西田には2つの目的がありました。一つは、妹の復讐。そして、もう一つが、「刑法39条」に対する異議申し立てです。西田は作戦を立てます。多重人格のふりをして無罪を獲得するという作戦です。そのためには、本当の自分ではない人格が、見ず知らずの男を殺害したというストーリーにしなければなりません。そこで、柴田という別人になりすましたのです。

 このように、この作品は、ミステリーとしても優れています。しかし、映画の主題は、あくまで「三十九条」をどう考えるかです。

 今回は犯人が詐病であったため、まだ分かりやい内容でした。しかし、もし、この映画の犯人が統合失調症であれば、おそらく、収拾がつかないほど、難しい話になっていたでしょう。

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 鑑定人の小川は、最終的に、犯人を完全責任能力とします。しかし、鑑定人と犯人の「主張」は一致していました。「刑法三十九条は、裁かれる権利を逆に人から奪っているのではないか・・・」という点においてです。

 私はその「主張」に対して部分的にしか賛同できません。なぜなら、刑法三十九条が適応されて然るべき人も実際少なからずいるからです。一方、被害者の怒りや悲しみといった感情が、これまでないがしろにされてきたのも事実だと思います。この20年の間にできた「医療観察法」や「犯罪被害等基本法」に基づいた対策や対応が、より充実することを期待しています。

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 今年はこのブログで最後です。来年がみなさまにとって良い年になりますよう、心よりお祈り申し上げます。

令和3年12月1日
院長 松本康宏