2021/07/02

嘘をつかない方法

 みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

 今回は、「うそ」に関する話です。

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 私は、ウソをつくのが苦手です。女性から、「最近、太っちゃった」と云われたりすると、途端に困ってしまいます。「そんなことないよ」という一言がいえません。

 周囲をみても、ウソをつくのが得意(平気)な人と苦手な人がいます。私はたまに「開業したら、流行るかなぁ~」とつぶやきますが、周囲の反応は様々です。「先生が開業したら、絶対流行りますよ~」とウソをついてくれる人もいれば、どうにかして話題をそらそうとする人もいます(おそらく後者は、ウソが苦手な人なのでしょう)。

 ただ“うそ”をつかない人が良い人とは限りません。うそにも色々種類があります。『あなたはこうしてウソをつく(阿部修士著)』によると、うそをつくのは女性より男性の方が多いそうです。また、男性は利己的な嘘をつきやすいのに対し、女性は利他的なウソをつきやすいとのこと。

 上の「そんなことないよ」という一言や「絶対流行りますよ~」という励ましは、利他的なウソに含まれるのでしょう。

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 医者になったばかりの頃、「摂食障害の患者さんはよく“うそ”をつく」という文章に目が留まりました。ただこれは別に不思議なことではありません。食べることができないのに、「食べたかどうか」尋ねられると、段々苦しくなってきます。それ故、うそをつき始めるのも、当たり前といえば当たり前の話です。

 依存症を抱えた人との付き合いも“うそ”がつきものです。「飲んだか?」「飲んでない!」、そういったやりとりは日常茶飯事。

 先ほどの本によると、うそをどれくらいつくかは、個人の要因よりも「状況要因」の方が大きいそうです。摂食障害や依存症の場合にもおそらくこれがあてはまります。

 とはいえ、「依存症」から脱却するには、正直になる(嘘をつかなくなる)ことが大事です。どうしてかというと、よく分かりません(考察する時間が足りませんでした)。ただ次のようなことは言えそうです。考えてみると、「嘘」と「依存性物質」は似ているような気がします。どのように似ているかというと、どちらも癖になります。なおかつ、その場しのぎの効果は得られますが、多用すると人間関係を壊します。こういったことを踏まえると、依存症からの回復には、「嘘」という依存性物質に頼らない生き方が求められているのでしょう。

 では、「嘘」をつかないようにするには、どうすれば良いのでしょうか。意志を強く持とうという方法では難しそうです。やはり以下の2つが必要と思われます。

①患者さん自身が病気の回復に努めること。
②正直になれる「関係」や「場所」が用意されること。

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 『SMARPP』(ミーティングで使用している教材)には、次のように記されています。

 <回復のためには、あなたの薬物やアルコールの問題にともに取り組んでくれる信頼できる援助者に、薬物やアルコールを使いたい気持ちや、使ってしまった場合には「なぜ使ってしまったのだろうか」ということなどを、すなおに話せるようになることが、何よりも大事なのです>

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 さきほど、嘘から脱却するには、「患者さん自身が病気の回復に努めること」と書きました。

 ゆっくり考えると、自分のことを大切に思ってくれている人が誰なのか分かります。そういう人を見つけて、その人の意見に耳を傾けてみる。それが、嘘をつかない最初のステップなのでしょう。

令和3年7月2日
院長 松本康宏