2022/01/04

現状維持

 新年あけましておめでとうございます。

 今回は、「現状維持」について考えてみようと思います。

 「現状維持」というと、皆さんはどのようなイメージを持たれるでしょう。どちらかというと「消極的でやる気がない」、そんなイメージを持たれる方が多いのではないでしょうか。

 お笑いトリオの『ダチョウ倶楽部』は、自分たちのモットーを「現状維持」と述べています。「目標は常に低めに設定」「決して新しいことをしない」「先輩を持ち上げて、後輩も持ち上げて、そして自分たちは現状維持」といって、周囲を笑わせます。

 実をいうと、精神科の医療も、「現状維持」がモットーです。「もっと良くしたい、早く良くしたい」と思うのは人情ですが、そういった気負いは、逆に病気を悪化させてしまいかねません。むしろ、「今より悪くならないように」とか「生活がこわれないように」とした姿勢の方が治療的です。

 なお、こうした関わり方は、苦しい状況下でも、同じです。

 例えば、母親とけんかの絶えない女性がいたとしましょう。そんなに諍いが続くなら、「親と一緒にいないで、別々に暮らせばいいのに・・・」と思うのが一般的な考え方。でも、「それができるなら、とっくにそうしている」とした見かたも成り立ちます。精神科医であれば、たいてい後者の見かたをするでしょう。

 母親とけんかばかりしているその女性は、きっと二つの「不安」を抱いています。一つは、接近不安(相手に飲み込まれるような不安)。そしてもう一つが分離不安です。そのため、親と近い距離にいるとドンパチやってしまうのですが、離れたら離れたで、今度は「分離不安」が異常に高まります。その結果、場合によっては、自殺企図を起こしたりしかねません。

 そこで、まずは小さな工夫を積み重ねていきます。例えば、若い女性(娘)の良い面を取り上げたり、心理的な問題より、解決しやすい生活上の問題から手を付けるようにしたり、娘の攻撃性をかみ砕いて返す術を親に伝えたり・・・、そういった工夫です。

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 以上こうやってみてくると、「現状維持」とは、単に消極的な姿勢ではないことが分かります。「現状維持がモットー」といって周囲を笑わせている『ダチョウ倶楽部』も、実は生き延びる上で必要な「基本的スタイル」を貫いているのかもしれません(だからこそ、芸能界で生き残っているとも考えられます)。

 ということで私も、「現状維持」。それが今年の目標です。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

令和4年1月4日
院長 松本康宏

追伸:1月11日(火)18時~19時、依存症のWEBセミナーを行います。このシリーズは今回が最後です。多くの方のご参加をお待ちしています。詳しくは、ホームページに掲載したポスターをご覧下さい。