2021/04/26

精神障がい者の理解ーその2

 皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

 今回は前回の話の続きです。

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 患者さんと関わる上で、治療者側が「自分の気持ち」に気付いておくのは重要です。ただこれは、簡単なことではありません。実際、私もなかなかできずにいます。

 熱心になればなるほど、「この人(患者)はいったいどういう人なのだろう?」「どうしてこんなことをするのだろう?」「果たして何を考えているのだろう?」と相手のことばかり考えてしまいます。

 しかし、一旦そこで立ち止まり、「どうして自分はこんなに熱心になっているのだろう」と考えてみるのです。すると、新しい発見が得られることが多々あります。

 これは別に治療者-患者さん関係にだけいえることではありません。あらゆる人間関係にあてはまることです。

 例えば、配偶者に不満を抱いている人は、相手に「期待し過ぎている」ことに気付くかもしれません。またあるいは、同性の上司に不満を抱きやすい人の中には、子どもの頃から同性の親と葛藤的な関係にあったことに気付く人もいるでしょう(つまり、それは、上司が自分の親のように見えているということです)。

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 なお、関わる方が、自分の体調や精神状態を整えておくことも重要です。前回のブログにも書きましたが、自分に余裕がないと、精神障がい者と向き合うことは困難です。

 朝、病院に出てくると、「担当している患者さんの容態が悪い」とか、「流行性の感染症が院内で発生している」とか、様々な悪い知らせが届きます。すると、そのあとの業務(例えば外来)になかなか集中できません。どうにか、思考を整え、その場に集中しようと試みますが、明らかにパフォーマンスは低下してしまいます。

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 その他のこととして、精神科というと、患者さんからの暴力が怖いという話を耳にします。これに関しては、実際、滅多に起こることではありませんが、確かに油断は禁物です。かといって、用心し過ぎると、コミュニケーションが取りづらくなります。また、こちらの緊張感が伝わって、相手も緊張し、逆に暴力が増えるような気もします。やはり、接遇を工夫していくことが大事なのでしょう。

 では、どういう時に、人は怒るのか?それについてちょっと考えてみます。

 コフートという人は、「人はプライドを傷つけられた時に怒る(自己愛憤怒)」といっています。そういった点からも、前回のブログで記したように、「礼節」は大事です。

 実際、現場で起こる暴力は、頻度の面だけでみると、患者さんの「ペースを乱した時」が一番多いように思います。例えば、入浴を嫌がる患者さんに、入るよう促したり、拒薬している患者さんに薬を飲ませようとした時です。とはいっても入浴や服薬は必要なことですから、関わる側としてはまさに泣き所です。

 そういった場合、「予告」が役に立つこともあります。例えば、「今日、午後からお風呂ですよ」と、前もって伝えておくのです。仮にそれだけで落ち着かなくなるようであれば、別の方法を考えるしかありません。また、「お風呂ですよ!」というところを「お風呂に入りませんか?」と疑問形に変えてみるのもちょっとした工夫です(続く)。

令和3年4月26日
院長 松本康宏