2021/05/14

精神障がい者の理解ーその5

 みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

 今回は、精神障がい者の『支援の仕方』について、お伝えします。

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 治療には「型」があります。すなわち、病気や障害によって、「適切な関わり方」がある程度決まっているのです。まず、その説明をいたします。

 ①精神病圏内の人には、<早期の診断と適切な精神科治療>
 ②パーソナリティ障害圏の人には、<マネジメントと現実志向型の精神療法>
 ③神経症圏の人には、<精神療法と補助的薬物療法>
 ④発達障害圏の人には、<特性を考慮に入れた関わり(心理教育・コーチング・環境調整)>
 ⑤器質障害圏の人には、<情緒的な交流、および疾患に寄り添った社会の構築>

 さらに、①~⑤について、詳しく見ていきます。

 ①について。
一般の方は基本的に「心因論者」です。精神変調をきたして、「脳の病気になった」と考える人はまずいません。普通は、ストレスのせいかな?とか環境のせいかな?と考えます。

 統合失調症や双極性障害は若い頃に発症しやすい疾患です。発症した当初は、症状がでそろっておらず、診断がはっきりしないこともよくあります。そんな時、周りの人は、「受験勉強のせいだ」とか「いじめられているんじゃないか」等と考えます。しかし、病気が発症した可能性もあるわけです。

 それ故、専門家であれば、できるだけ早期に診断をして、薬物療法など、適切な治療を行わなければなりません。それが、上に記載した①<早期の診断と適切な精神科治療>の意味です。

 次に②について。
パーソナリティに問題を抱えた人は、「ある段階からうまく発達できていない」とした理屈が成り立ちます。そこで精神科医の中には、「そこに遡って、もう一度“育ち治し”をかければ、良くなるんじゃないか」と考える人もいます(私も理論的には正しいと思います)。

 しかし、実際、理屈通りに事は運びません。大人が退行(子ども返り)すれば、自傷行為が増えたり、隔離や拘束を要するなど、治療に難渋します。むしろ、退行させないようにしていくのが、治療のコツです。そういったことを踏まえ、②<マネジメントと現実志向型の精神療法>と記しました。

 次に③について。
本当は薬物療法より精神療法の方が重要な人たちです。ただ、外来では患者さんを何十人も診ないといけないため、薬に頼りがち。自戒の意味も含めて、<精神療法と補助的薬物療法> としています。

 ④発達障害の場合は、心理教育やコーチングが有効です。「その3(4月28日のブログ)」で述べた洞察療法などは向きません。特性を理解した上で、その人に合った具体的なアドバイスをしていく必要があります。

 最後の⑤については、主に「認知症」を想定しています。情緒的な関わりというと、②や③をイメージする人が多いかもしれませが、認知症の人にこそ情緒的な関わりが求められています。なお、「治そう」とする行為を否定はしませんが、治らなくても「苦しくならないような社会」を構築する方が重要です。

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 さて、「自傷」や「依存症」、「引きこもり」といったケースでは、対応に迷うことも多いかと思います。その際には、彼らが抱えている「生きづらさ」が、上記①~⑤のどれにあてはまるか、検討してみて下さい。

 「脳の病気を抱えた生きづらさ」であれば、早期の診断と適切な精神科治療。
 「パーソナリティの問題を抱えた生きづらさ」であれば、マネジメントと現実志向型の精神療法。
 「ストレスを抱えた生きづらさ」であれば、精神療法と補助的薬物療法。
 「発達障害を抱えた生きづらさ」であれば、特性を考慮に入れた関わり(心理教育・コーチング・環境調整)。

 単純化しすぎかもしれませんが、以上が、精神障がい者の『支援の仕方』です。<終>

令和3年5月14日
院長 松本康宏