2020/04/30

SF

 皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

 今回、ウイルスに関するサイエンス・フィクションを書き留めました。自粛が求められる中、時間つぶしに、読み進めて頂ければ幸いです。

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 栗本慎一郎さんという人をご存じでしょうか。

 かつてよくテレビに出ていた学者さんです。短期間ですが、秋田ミネソタ州立大学の学長を務めていたこともあります。

 昔この人が書いた『パンツをはいたサル』という本が評判になりました。その続編にあたる『パンツを捨てるサル』という本に、確か、次のようなことが書かれていました。人間はウイルスに罹ることで進化するといった内容です。なにせ30年も前のこと。そんな考えがあることに驚きました。

 現在、多くの学者はこういったウイルス進化論をSF(サイエンス・フィクション)と捉えています。ただ私は意外と正しいのではないかと思っています。

 私たちのゲノム(遺伝情報の全体)には、かつてウイルスに感染した痕跡があります。その痕跡はウイルス化石と呼ばれ、ゲノムの8%を占めています。しかし、本当はもっと多いのではないでしょうか。いや、それどころか、今の私たちのゲノムは、生命誕生の頃から、様々なウイルスに感染することでできあがったのではないでしょうか。

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 ウイルスはしょっちゅう微細な変異を起こしています。実は気付かないだけで人間も短期間のうちに変異しているのかもしれません。

 「統合失調症は、古今東西、発症率は同じである」と習いました。しかし、ここにきて、多くの精神科医が統合失調症は減っていると言い始めています。発症年代にあたる若年人口が減少していることや、軽症化して分かりにくくなっていること、あるいは、以前なら統合失調症と診断された人の中に発達障害が混じっていること、そういったことも統合失調症が減った要因です。ただ、それだけで説明することは難しいと思います。やはり、発症自体、減っているような気がしてなりません。

 逆に発達障害はすごく増えています。その要因として、障害が認知されたことや、社会が変化して発達障害の人が不適応を起こしやすくなったことがあげられます。またそれとは別に「発達障害の特徴を持つ人自体が増えている」とした主張もよく耳にします。

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 生物にとって「多様性」は大事です。色んなタイプがいないと、環境が変わった時に全滅しやすくなるからです。実際、環境の変化で、マイナーなタイプがメジャーになることも珍しくありません。

 自閉症スペクトラムの人の中には、特殊な才能を持った人がたくさんいます。最先端の企業が集まるシリコンバレーで活躍している人も自閉症スペクトラムの割合が高いと聞きます。もしかすると、将来、自閉症の特徴がないと生きづらい時代がくるかもしれません。

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 さて、話をウイルスに戻しましょう。

 医者になってから、精神科の仕事だけをしてきました。だから、ウイルスとは無縁な立場にいました。しかし、新型コロナの影響で、最近、ウイルスに関する記事に目が行くようになりました。

 ウイルスの構造はシンプルです。DNAもしくはRNAを殻で包んだだけ。細胞を持たないため、生物には含めないと考える人が多数を占めます。しかし、人間の深い思考もウイルスの活動も、元をたどれば4つの塩基によるデジタル信号。そう考えると、ウイルスは、私たち生物の「究極の姿」ともいえます。

 確かドーキンスだったと思いますが、彼は人間(生物)を「遺伝子の乗り物」と捉えました。人が恋をし、子孫を残すのも遺伝子の仕業。遺伝子にとっては、新しい乗り物に乗り換えるための作業です。

 さらに想像を膨らませて、遺伝子をウイルスみたいなものと考えれば、人体とはウイルスにとって家であり、町であり、基地と捉えることが可能です。その場合、脳が司令塔で、自然免疫が一次防衛隊、獲得免疫が二次防衛隊です。新型コロナの流行もヒト対ウイルスの戦いというより、ウイルス対ウイルスの戦争とみることが可能でしょう。

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 変異を続けるウイルスですが、一般的には毒性を弱める方向に向かいます。というより毒性が強まったタイプは宿主(しゅくしゅ)と共に死んでしまうため、生き残ることができません。これもなんだか人類の歴史と似ているような気がします。

 人類の歴史は侵略の歴史です。侵略時には、激しい戦闘が繰り広げられますが、先住民が滅亡することはまれ。侵略が阻止できない場合、両者は交雑し、混血民族が生まれます。

 実はこういった民族の交配も、「多様性」を生み出すために遺伝子が仕掛けているのかもしれません。また、将来的には新型コロナの影響で、私たちのゲノムが微細に変化し、新しいタイプの人が出てくる・・・そういったことまで想像が膨らんできます。

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 以上、ふざけたことばかり書いてきましたが、新型コロナウイルスはまだまだ凶暴です。感染を避けるに越したことはありません。どうか連休中もご注意下さいますようお願い申し上げます。

令和2年4月30日
院長 松本康宏