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2024/02/02

岡山への旅ーその4

 みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

 

 今回は『岡山への旅-その4』です。

 

 旅を楽しむ上で、知っておいて損をしないのが、昔の国名です。例えば、徳島なら昔は阿波(あわ)と呼ばれました。京都や大阪から阿波へ出向く際の「あわへの路」。それが淡路島です。こういう話を聞くと、なぜだか「味わい」が出てきます。それは、名前の由来を知ることで昔の人々の思いを感じることができるからでしょう。

 

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 現在の岡山県は、昔の国名でいうと、備前(びぜん)、備中(びっちゅう)、美作(みまさか)です。そして岡山市があるのが備前。倉敷市が備中、広島県福山市が備後(びんご)です。

 

 備前・備中・備後はその名が示す通り、大昔は同じ国でした。大和王権が吉備国(きびこく)の力を削ぐために3つに分けたのです。

 

 以前のブログ(岡山への旅―その1)で触れたように、岡山の人は広島にコンプレックスを抱いています。それは岡山市より広島市の方が大きいからです。ならば岡山市(70万人)と倉敷市(40万人)を合併して100万都市をつくれば良いのではと思いますが、なかなか簡単にはいきません。それはおそらく、心のどこかに「備前と備中は違う国だ」という思いがあるからでしょう。

 

 備中の倉敷は言わずと知れた観光名所です。倉敷と聞いて、川沿いに立ち並ぶ白壁の蔵屋敷を思い浮かべる人は多いでしょう。一方、倉敷は工業都市としての顔を併せ持っています。水島コンビナートです。秋田と岡山はあまり接点のある県ではありませんが、石油会社つながりで男鹿から水島に移った人もいると聞いています。

 

 もう一つの国、備後(びんご)は、岡山県ではなく、広島県に位置します。中心は福山。しかし尾道(おのみち)の方が知られているかもしれません。

 

 以前、『とんび』という映画を紹介したことがあります。舞台は架空の街、備後市でした。実際は、福山市をイメージしているのでしょう。阿部寛と安田顕が備後の言葉でやり合います。「これが備後のしきたりじゃ」「備後の男とはのう」。土地の雰囲気が伝わってきます。

 

 尾道は大林信彦監督の映画で有名になりました。「古里」を探しにこの地を訪れる人が今も絶えません。大林監督は尾道の出身。古びた黒い屋根瓦、細い路地裏、石畳の階段、こういった監督の「原風景」が、人々の郷愁を刺激するのでしょう。

 

 そういえば、昨年、上映された『イチケイのカラス』も瀬戸内が舞台でした。個性豊かな裁判官(竹野内豊)と弁護士(黒木華)が事件の謎に挑みます。設定は岡山でしたが、私は福山を思い浮かべながら観ていました。

 

 福山市は戦後、日本鋼管の企業城下町として発展します。高校時代、福山出身の友人が自慢げにこんなことを言っていました。「高炉を全部開いたら、世界一じゃけん」。企業城下町に住む人々にはこういった「特有の思い」があります。今回の事件を解く鍵もそこにありました。

 

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 旅先には、そこで暮らしてきた「人々の思い」が詰まっています。昔の国名を手がかりに、それを探しにでかけませんか?

 

令和6年2月2日

院長 松本康宏

 

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