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2024/06/26

保護司~加害者との関わり

 みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

 

 今回のテーマは、「保護司~加害者との関わり」です。なお加害者といっても様々な人がいるため、反社会性パーソナリティの人に限定して話を進めます。

 

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 『刑務所の精神科医-治療と刑罰のあいだで考えたこと』(みすず書房)という良書があります。そのなかには次のように記されていました。

 

 <精神療法にはいろいろな流派や技法がある。細かく数えていくと際限がないが、一説によれば数百に及ぶらしい。その中に加害者の精神療法に向いている技法があるのだろうか。>

 

 <結論から言えば、何か特定の技法が相応しいということはないように思う。ロジャーズ派の精神療法は患者との関係を確立するうえで参考になる。精神分析は患者心理の理解に、家族療法の知見は非行・犯罪の発生の理解にそれぞれ役立つ。加害者を対象とする精神療法は、精神療法の中でも相当の応用編である。特定の技法にこだわらず、使える技法はなんでも使い、できることはなんでもするというのが適切なスタンスであろう。>

 

 このように、反社会性パーソナリティの人との関わりは、登山でいうと最難関のコースです。その道をものともせず、ひょうひょうと登っていく人がいます。加害者の更生に携わっている保護司のような方です。

 

 私はかねてから保護司という職に関心を持っていました。保護司は、保護観察にある者と定期的に面談をし、生活状況などについて話し合いながら、助言や指導を行います。立場的には準公務員ですが、活動はあくまでボランティア。そのため、給与は支払われません。正直に言って、よくこんな大変な仕事をボランティアでやってくれる人がいるものだと感心します。

 

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 『非行・犯罪からの立ち直り』(金剛出版)という本があります。これも良書です。そのなかで、著者は、保護司について次のようにコメントしています。

 

 <これまで数えきれないほどの保護司との出会いがありましたが、誠実で素朴な愛情が溢れる方々が大半で、その人柄をもって非行のある少年や犯罪をした者に親身に接し、時間をかけて良い影響を与えているものと思われます>。ちなみに著者の長尾和哉氏は保護観察所長をされている人物です。

 

 なお、この本のなかには、次のようなことも記されていました。

 

 <これまで10人ほどの無期刑の仮釈放を担当しましたが、そのほとんどが前歴を世間に知られることもなく、平穏な生活を送っていました。(中略)その一方で、彼ら彼女らが贖罪意識に目覚めた生活態度であったのかと問われれば、答えに窮せざるを得ません。すでに被害者の遺族との接点はなく、保護司の勧めで近隣の寺院に赴き、被害者の永代供養をするなどの動きがあった者が散見されるものの、被害者遺族への慰謝などの措置が全くなされないまま、ひたすら時間の経過だけが記録として積み重なっているのが実情でした。>

 

 やはり無期刑になるような人が贖罪意識を持つのは簡単なことではないのでしょう。なぜなら、罪と向き合うと、死んでしまいたくなるからです。

 

 そもそも犯罪を繰り返すような人は贖罪意識が芽生える土壌が乏しいのかもしれません。その土壌とは、自分も他人も大切な社会の一員であるという認識です。罪を犯した者にこういった認識を持ち合わすべく、保護司の方々は、日々尽力されているのだと思います。

 

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 先月、滋賀県大津市で保護司が保護観察中の者に殺害されるという事件が起きました。実は保護司が保護観察対象者に殺された事件は60年ぶりとのことです。

 

 一過性の報道では、不安をあおるだけの結果になりかねません。これを機に保護司の仕事が世間に知られ、保護観察のあり方が建設的に議論されることを願います。

 

令和6年6月26日

院長 松本康宏

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