2024/06/28
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加害者の更生~2つの映画から
みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
今回のブログは、前回の続きです。『前科者』と『すばらしき世界』という2つの映画を題材に「加害者の更生」についてみていきます。
2つの映画のあらすじはこうです。
<前科者>
主人公は保護司の女性(有村架純)。歳の頃は30歳前後です。コンビニで働きながら、罪を犯した者の更生にあたっています。彼女が担当するある男性は、元殺人犯。今はすっかり更生し、自動車の整備工場で油まみれになって働いています。その姿を見て、ほほえましく思う主人公。しかし、その男性が忽然と姿を消します。それと同時に殺人事件が勃発。彼の名が容疑者として挙がります。「まさか」「そんなはずはない」。動揺する主人公。事件の展開とともに、彼女が保護司になった理由(わけ)も明かされます。
私はこの映画を観て、「こんなに若い女性が保護司をしていて怖くないのかな」と思いました。しかし、その考え自体偏見なのかもしれません。保護司についてもっと知る必要がありそうです。
<すばらしき世界>
主人公(役所広司)は元ヤクザです。歳の頃は60代。13年間、旭川で刑に服した後、出所してきました。シャバに出て、仕事に就こうと試みますが、元殺人犯を温かく迎えてくれるほど、世間はあまくありません。悪戦苦闘する主人公。役所広司の演技が光ります。
この映画はリアルです。たいてい映画に出てくる殺人犯といえば、知能犯かつ愉快犯。しかし、実際は、この映画の主人公のようなタイプが多いと思われます。不遇な環境で育ったせいか、粗野で衝動性が高く、社会規範や「ほどよい感覚」が身についていません。
この映画では、カッとしやすい主人公に対して、周りの人たちが、次のように諭します。腹が立ったら、その場から離れろと。これは的を射たアドバイスです。アンガーマネジメントの基本でもあります。
ただ怒りへの対処法を学べば、罪を繰り返す人が激減するかというとそんなことはないでしょう。やはり、もっと土台の部分、加害者の自尊心の回復が大事です。
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上の映画には共通項が見いだせます。「幼少期の逆境体験」と「就労」です。この2つは加害者の自尊心に関わります。
私は自尊心には2種類あると思います。内側の自尊心と外側の自尊心です。
内側の自尊心は、生まれてから今日(こんにち)に至るまで、人との関わりや体験を通して培ってきたもの。補足すると、心の中で常に自分を勇気づけてくれるものです。罪を繰り返す者にはこういった感覚が欠如しがちです。
外側の自尊心は、社会的ポジションから得られる安心感のようなもの。補足すると「自分は必要とされている」とした感覚です。この感覚を得るために就労などが課題となります。
映画を観ていると以上のようなことを再確認できます。
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『前科者』と『すばらしき世界』は“一粒で二度おいしい作品”です。加害者の更生について学ぶこともできれば、娯楽にもなります。ぜひ、ご覧になってみてください。
令和6年6月28日
院長 松本康宏
追記:7月21日、『当事者の声を聴く会』を開催します。ぜひ、みなさまご参加下さい。