2025/02/10
人と地域を
もっと健康に
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これからの精神医療(前編)
みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
3月8日に開催される『当事者の声を聴く会』で30分ほど話をすることになりました。タイトルは『これからの精神医療』。今回、その一部をブログに記します。
私は『ケンタッキー』のフライド・チキンが好きです。本当かどうか分かりませんが、スパイスの調合法を知っている人は、世界に3人しかいないといわれています。企業にはこういった企業秘密があります。そこが病院と違うところです。医療関係者は、ノウハウを秘匿してはいけません。隠さず伝えることが多くの患者さんを救うことにつながるからです。もし回生会の取り組みのなかで「まねたい」と思うことがあれば、ぜひ採り入れてみてください。また、病院見学も受け付けていますので、ご興味がある方はご連絡いただければと思います。
精神科の場合は特に、生物学的な見方・心理的な見方・社会的な見方、この3点から患者さんを診ることが求められます。「生物学的な見方」というのは「脳の病気」としてみるということです。例えば、一言で「うつ」といっても色んなタイプがあります。脳の神経伝達物質が減って「うつ」になっている人もいれば、上司と合わなくて「うつ」になっている人もいます。また経済苦が「うつ」に影響していることもまれではありません。そのため、生物・心理・社会の観点から患者さんを診て、その人にあった支援をしていく必要があります。
<生物-心理-社会>といった観点から支援をしていくやり方は、分かりやすくいうと、患者さんの生活が壊れないようにしていくやり方です。このことからもチーム医療の重要性が分かります。上記でいうと、上司と合わなくて「うつ」になっている場合は、心理士によるカウンセリングの併用。経済苦が「うつ」に影響している場合は、ケースワーカーの活用。こういったチームでの関わりが望まれるというわけです。
では、チーム医療が進むなか、医者に求められるものは何でしょう。一つは薬物療法や精神療法といった専門的治療。そしてもう一つが、支援体制の「マネージメント」です。これはいわば部活のキャプテンのような役割。今後はさらに、「院外の人とどうチームを組んでいくか」とした課題も起きてくると思います。
とはいえ、病院外の人とチームを組むのは簡単なことではありません。国は、「関係機関で『ネットワーク』を構築し、支援していこう」といいますが、これが可能なのはごく一部のケースです。あまたあるケースを病院、学校、警察、保健所、児童相談所、民間団体などで連絡を取り合いながら支援していくのは、時間的に不可能です。
では、将来的にはどのような支援体制になっていくのでしょうか。私は次のような姿を想像します。それは地域のあちこちでさまざまなグループが誕生してくる姿です。
グループのなかには治療を目的としたものもあれば、情報交換を目的としたものもあります。もちろん、ハンディを抱えた人たちを支援するグループの存在も欠かせません。規模は比較的小さく、関係はフラット。リーダーは志があれば誰でも構わないでしょう。対象は、依存症、発達障がい、摂食障がい、引きこもり、ハンディを要する子どもや高齢者などです。
このような話を聞いて、夢物語のように思う人もいるかもしれません。しかし、世界に先駆けて国民皆保険や母子健康手帳を作ったのは日本人です。であれば私たちだってできるのではないでしょうか。
以上、『これからの精神医療(前編)』について語りました。後編は2月12日に載せます。引き続きご愛読いただければ幸いです。
令和7年2月10日
院長 松本康宏