2025/09/03
人と地域を
もっと健康に

これからの依存症対策-その8
みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
今回は『これからの依存症対策-その8』。前回の話の続きです。
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精神疾患を有する患者さんの多くは、病気と障害、この二つの問題を抱えています。そのため、治療と支援が必要です。そんななか、精神科医に求められているものはなんでしょう?一つは薬物療法や精神療法といった「治療技術」。そしてもう一つが支援体制の「マネジメント力」だと思います。
この20年のあいだに、院内の「チーム医療」はかなり充実しました。ではこれからはというと、「病院外の人とどうチームを組んでいくか」、それが大きな課題になると思います。
国は“ネットワーク”という言葉が好きです。「関係機関でネットワークを作って支援にあたりましょう」。よくこういった話を聞きます。児童虐待のケースでいうと、医療機関、保健機関、保健所、警察、学校、保育園、児童相談所、弁護士会、以上のような関係機関がネットワークを作り支援をしていく。こうした発想です。しかし、すべてのケースでこの体制を敷くのは困難でしょう。時間が圧倒的に足りないからです。
そこで私は次のような未来の姿を想像します。それは、色んな取り組みをしている小グループがあちこちで誕生してくる姿です。これが理想ではないでしょうか。
グループの特色は何だって構いません。依存症のグループ、発達障がいのグループ、経済困窮の子どもを支援するグループ、高齢者を支援するグループ……、様々な形態が考えられます。また、一言で「依存症」といっても「家族の会」もあれば、「当事者の会」もあるでしょう。特徴としては、比較的小さな集団、フラットな関係、情熱のあるリーダーの存在、こういったものがあげられます。
実をいうとすでに、こうしたグループが秋田でも立ち上がっています。何を隠そう、9月4日開催される秋田県精神保健福祉協会研修会でご登壇される方たちがその代表です。私はそういった人や活動を応援したいと思います。
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10年ほどまえから、<これからは「依存症」と「発達障がい」の時代>といわれるようになりました。これは統合失調症や双極性障害の重要度が下がったということではありません。「依存症」と「発達障がい」を抱え、支援を必要としている人がたくさんいるということです。「依存症」と「発達障がい」には他にも共通項があります。それは治療上、薬物療法のウェイトが低いこと、グループワークが有効なことです(ADHDは薬物療法が重要)。
当院はそういったなか、依存症の治療体制を整えようとしてきました。結果、様々なプログラムが行われるようになり、依存症の拠点機関にもなることができました。一方、発達障がいに関しては意図してというより、自然と治療体制が整ってきたように思います。例を挙げると、『発達障がい外来』の新設や発達障がいを対象とした生活支援プログラム『STEP』の施行などです。
とはいえ、まだまだやらなければならない課題が山積みです。「ゲーム依存症のプログラムを作ってくれませんか!」という声もいただいていますし、発達障がいを持った人に特化した「就労支援プログラム」を作って欲しいとした声もあります。そうしたことから、「依存症」及び「発達障がい」の支援体制をさらに強化していかなければと考えています。
以上、『これからの依存症対策-その8』では、これからの支援体制について話をしました。
次回も依存症の話をします。引き続きご愛読いただければ幸いです。
令和7年9月3日
院長 松本康宏