2020/12/23

コロナとうつーその3

 皆さん、こんにちは。いかがお過ごしでしょうか。
今回は前回のブログの続きです(『コロナとうつ-その3』)。

 気分障害にはうつ病と躁うつ病(双極性障害)があります。また、気分障害には含めませんが、うつ状態を呈している人の中には、「適応障害」の方もいらっしゃいます。双極性障害の多くは長期の治療が必要です。それ故、通院されている方の中で占める割合は高くなります。しかし、新患(初めて病院を受診される方)の割合としてみると、適応障害の人の方がうつ病や双極性障害よりずっと多いように思われます。

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 テレビで「うつ病」の特集があると、だいたい次のようなケースが取り上げられます。長時間勤務を続けていたエンジニア。ある時、うつ病を発症。精神科に通院するようになり、抗うつ薬を服用。しかし、なかなか良くならず、現在もリハビリ中・・・。東京など、大都会ではよくある話かもしれませんが、秋田では滅多にお目にかかりません。むしろ多いのは次のようなケースです。

 小さいユニット(3人とか4人)で業務をこなしています。ある時、何らかの理由でその中の一人が職場から離脱。その結果、他の人の負担が増え、“うつ”になる人が出現・・・こういったケースです。こちらも上と同様、過重労働が原因ですが、比較的回復が早く、薬も少なくてすむように思います。

 また、上記のように「オーバーワーク」が原因のこともあれば、対人関係が原因のこともあります。対人関係といえば、かつては姑との関係で悩んでいる人をよく見かけました。しかし今はほとんど見かけません。多くは職場内での人間関係です。中でも上司との関係で悩んでいる人が一番多くを占めます。ただ最近は、「部下がいうことを聞いてくれない」と言って受診される方も増えてきました。さらに付け加えると、「仕事が自分に合わない」といって来られる方も増えています。

 このように“うつ”の原因は様々です。また人によって「程度」も異なります。程度が違えば治療法も異なります。中等症以上の場合には、抗うつ薬を主体とする薬物療法が必要です。一方、軽症の場合には、気分転換、運動、カウンセリング、環境調整等が有効です(勿論、補助的に薬を用いたりもします)。

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 次に、うつの「予防」といった観点から、「デフォルトモードネットワーク」の活用についてご紹介いたします。

 デフォルト・モード・ネットワークとは、“ぼうっ”としている時に働く「神経回路」です。従来、脳は物事に集中している際に活発に働き、“ぼうっ”としている時には休んでいると考えられてきました。しかし、実は、集中していない時の方が、脳はエネルギーを消費しています。そのため、この神経回路に着目した記事が増えてきています。ただそれを読むとストーリーは2つに分かれています。

 一つのストーリーは、こうです。「脳がそれだけエネルギーを使用しているということは重要な働きをしている証拠。だから、人間には“ぼうっ”とする時間が必要」とした主張。もう片方は、「“ぼうっ”としている時に雑念が湧き無駄なエネルギーを消費している。それが脳の疲労につながっている。だから、マインドフルネス等を用いて気持ちを整えるべき」とした主張です。

 私は、瞑想には2種類あると考えています。「ポジティブな瞑想」と「ネガティブな瞑想」です。「次、どこに行こうかな」とか「こんど仕事であれをやってみよう」とした「いいこと」を思い浮かべるのがポジティブな瞑想。一方、嫌なことを思い出したり、「することもないし、酒でも飲むか」というのがネガティブな瞑想。

 推測の域をでませんが、デフォルトモードネットワークといってもこういった2つの回路があり、それが2つの異なるストーリーを説明してくれるのではないかと考えています。

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 人には3つの時間があります。①仕事の時間②家族や知人と過ごす時間③一人で過ごす時間です。中でも忙しい人に不足しがちなのが③の時間。しかし、③の時間は、人生を豊かにする上で不可欠です。ポジティブな瞑想をするには一人になる時間が必要だからです。

 では、ポジティブな瞑想をするには、どうすれば良いのか。まずは、「くつろげる空間」を見つけることです。「良い考え」というのは、くつろいだ時に浮かびやすくなります。ただし、人によってくつろげる空間は様々。ソファーで寝転がっている時が一番という人もいれば、音楽を聴いている時がベストという人もいます。それと「ポジティブな瞑想」をするには、一人でいる時間を作りすぎないことも重要。というのも退屈すぎると「ネガティブな瞑想」に入りやすくなるからです。

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 以上、今回のブログでは、“うつ”のタイプや治療について触れると同時に、デフォルトモードネットワークについてもご紹介いたしました。次回は最終回。「いいこと探し」の効用について考えてみたいと思います(続く)。

令和2年12月23日
院長 松本康宏