皆様、いかがお過ごしでしょうか。
11月26日、『当事者の声を聴く会』を開催いたしました。今回は4名の方に発表頂きました。いずれも味わい深いお話で、聞いていてジーンときました。参加して下さった方からも「嬉しい気持ちになった」「前向きになれた」「つながりの大切さを実感した」といった声を頂いています。発表して下さった当事者の方々、ご参加下さった皆様、会の準備をしてくれたスタッフ達に、この場を借りてお礼申し上げます。
『当事者の声を聴く会』は今回で3回目になります。1回目のテーマが依存症、2回目が発達障害、そして3回目が<統合失調症>でした。この会では当事者の話を聞く前に、医師よりミニ講演を行っています。今回はわたしが<統合失調症>に関する話題提供をさせて頂きました。その内容をブログに記したいと思います。一回では書ききれないため、4,5回に分けて連載する予定です。
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まず本テーマの<統合失調症>に入る前に、どうしてこのような会を開くことにしたのか、そのわけをお伝えします。それは一言でいうと、「にも包括」に影響を受けたからです。
「にも包括」とは、国が推し進める<精神障害者にも対応した「地域包括ケアシステム」>の略。文章で示しますと、<精神障害者が地域の一員として、安心して自分らしい暮らしをすることができるよう、医療、障害福祉・介護、住まい、社会参加(就労)、地域の助け合い、教育が包括的に確保されたシステム>ということになります。しかしこれを読んでもなかなかイメージが湧きません。
それより「にも包括(以下、『にも』と略)」の目標を捉えた方が、全体的なイメージがつかみやすいように思います。
『にも』の大きな目標は、(あくまで私なりの解釈ですが)以下の2つです。
①精神障害者の長期入院を減らす
②地域に埋もれている「精神的に困っている人」を支援する
①に関しては、従来からずっといわれてきていることです。これがまだ課題として残っているわけです。
②に関しては補足が必要でしょう。統合失調症や双極性障害(躁うつ病)といった病気が世間で十分認知されているかというと、そんなことはないと思います。しかしそれでも、そういった人たちはたいてい医療機関とつながっています。一方世の中には、どことも接点を持たない「精神的に困っている人」がたくさんいます。例えば、依存症や引きこもり、常に死にたい気持ちを抱いている人などです。そういう人たちにも手を差し伸べていこうというのがまさに『にも』の目標と考えます。
なお、国は『にも』の推進事業として14の項目を掲げています。その5項目目が<ピアサポートの活用に係る事業>。つまり「当事者の力をもっと借りよう!」「当事者の経験をもっと活かそう!」といっているのです。では当事者と接点があるのはどこかというと、それは病院をはじめとした医療機関。そこで当院が先陣を切って、この会(『当事者の声を聴く会』)を開いてみたというわけです(次回に続く)。
令和4年12月9日
院長 松本康宏