2022/12/19

当事者の会 その3

 みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

 今回は「当事者の会」の続きです。

 当事者の会―その1では『にも』についてお話ししました。その2では『統合失調症』。そして今回その3は、『障碍者を支える環境の変化』と精神科領域における『エポックメーキング』について記します。

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<障碍者を支える環境の変化>
① 支援が多職種で行われるようになった
② 情報を隠さずに説明、患者さんの意思・選択を尊重するようになった
③ 家族が障碍者を支えるという考えから、「社会が支える」という考えになった
④ 関連施設の増加

 まず①に関して。30年前だと患者さんをサポートするのは医者と看護者だけといった感がありました。勿論、ケースワーカーや心理士、作業療法士もいましたが、今とは比較にならないほど少ない人数でした。

 ②の「告知」に関しては今から考えると不思議です。統合失調症を“神経衰弱”と伝えたりしていました。昔と今とでは社会的な背景が異なるため、以前のやり方が間違っていたとはいえません。しかし自分が当事者であれば本当のことを伝えて欲しいと思います。

 ③に関しては、「考え方」が欧米に近づいてきたのだと思います。日本と欧米、どちらが正しいというわけではありませんが、国際的にみると日本はまだまだ家族が背負い過ぎです。そういった観点から現在、医療保護入院の制度も見直されようとしています。

 ④は統合失調症にもいえることですが、認知症のほうが顕著です。以前は認知症になってもすぐに入れる施設はなく、家族でみるしかありませんでした。

<エポックメーキング>
① 統合失調症に呼称変更(2002年)
② 発達障害支援法(2005年施行)
③ うつ病概念の拡大、うつ病の増加(2000年頃より)
④ 非定型抗精神病薬の登場(1996年)
⑤ 医療観察法(2005年施行)

 ①統合失調症に呼称が変更されて良かったのではないでしょうか。このことで差別や偏見が減ったように思います。

 ②「発達障害支援法」ができた影響は大です。その影響は教育や医療の分野に留まらず、社会全体に及んでいます。

 ③うつ病が人口に膾炙されたことは、良かった面と悪かった面があります。良かった面は治療を受ける人が増えて、「誰でも精神疾患になる」「病気になるのは気持ちが弱いからではない」、そういった考えが認知されるようになったことです。その結果、うつに限らず、他の精神疾患に対する偏見も減りました。

 ④に関しても副産物がありました。新しい薬が出たことで従来行われていた多剤大量処方が見直されるようになりました。

 ⑤医療観察法は完璧な法律ではありません。しかし、なかった頃よりははるかにいいし、実際一定の成果をあげることができているように思います。

 以上、<障碍者を支える環境の変化>と<エポックメーキング>について記しました。これをみても精神障碍者を支える「医療や環境」が明らかに改善してきていることが分かります。5年後、10年後はもっと良くなっていることでしょう。次回はこのシリーズの最終回。「提言」と「まとめ」を行います。

令和4年12月19日
院長 松本康宏