みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
今回は当事者の会―その4。シリーズ最終回です。会でおこなった<提言>と<まとめ>を記します。
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<提言>
① 色んな社会資源を活用しよう(一つの病院・主治医一人に頼らなくていい)
② 完璧に治そうと思わない(薬が増えたり、入院が長くなりやすい)
③ 余裕があれば、病気以外のことも考えよう(おいしいものを食べに行こうとか、あそこ
に出かけてみようとか)
④ 自由と安全が両立するように工夫しよう(身体拘束やコロナ対策)
⑤ 気持ちだけじゃなく体のケアもしよう
「当事者の会」に参加されるような方は、メンタルヘルスに関心の高い方だと思います。それはそれですばらしいことですが、病気のことばかり考えていてもいいことはありません。病気はあくまで「人生の一部」。ぜひ楽しいことも考えてみて下さい。
また、簡単なことではないかもしれませんが、病気や障害を持った自分を受け入れることも必要です。以下、複雑性PTSDの人が述べていたことを記します(これは以前書いたことがある内容です)。
「自分の父親がアルコール依存で、子どもの頃、しょっちゅう暴力を振るわれた」「すさまじい家庭環境で育った自分は、アダルトチルドレンである」「そのせいか大人になってからも、自分はどこか周りと違う、どこかおかしいと感じてきた」「そして、自分のおかしなところを治そう、治そうとしてきた」「でも、そうすればそうするほど、うまくいかなかった」。
「いわば自分は『紙風船』のようである」「へこんでいる部分を引っ張ったり、反対側を押してみたり・・」「けれども、今度は別のところがへこんだり、余計にくしゃくしゃになったりした」「だから今は、こういった自分をそのまま受け入れようと思っている・・・」。
その後、このかたは生きるのが楽になったそうです。大変な苦労をされてその境地に達したのでしょう。
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<提言>の最後に、「気持ちだけじゃなく体のケアもしよう」と書きました。
そう書いた理由は2つあります。一つは、精神的に具合が悪くなると体の病気も起こしやすくなるからです。しかもそういったときには、精神面に気を取られ体の問題を見落としがち。気付いたら手遅れといった事態を避けなければなりません。
そしてもう一つが、精神面を改善するには体のケアも必要だということ。食事・睡眠・運動、これらを整えずに専門的な治療を行っても効果は望めません。あくまで心と体はワンセットです。
なお次のような問題(社会的な課題)があることも書き留めておきます。外国の研究によると、近年、一般人口と統合失調症に罹患した人との「寿命の差」が開いています。これは統合失調症の患者さんにおいて体のケアが不足しているからです。今後こういった課題にも取り組んでいく必要があるでしょう。
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最後にこのシリーズの<まとめ>です。
普段、仕事をしていると、昔から何も変わっていないような感覚に捉われることがあります。しかしこのような機会に改めてこの数十年を振り返ってみますと、社会的にも、心理的にも、医学的にも進歩している面が多々あることに気付きます。ですから、関係者のみなさまには「希望」を持ち続けて欲しいと思います。
令和4年12月22日
院長 松本康宏
今年はこのブログで最後です。一年間、ご愛読ありがとうございました。来る年がみなさまにとって幸多き年になりますようお祈り申し上げます。