2023/03/04

歴史好きのメリット

 みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

 ロシアがウクライナに侵攻して1年が経ちました。悲惨な戦いが続いています。明治以降、日本の首脳部はロシアを恐れ続けてきました。隙を見せれば攻めてくると考えていたのです。私はそう聞いてもピンときませんでした。しかし今はよく分かります。ロシアには野蛮な面があります。文学や美術が優れているため騙されそうになりますが、決してルールが通用するような国ではありません。当時の日本人の読みは正しかったといえます。

 歴史好きはこういうことばかり考えています。「そんなことばかり考えていて何の役に立つの?」と聞かれると、答えに窮しますが、まあ好きだから考えているのです。

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 先日、丹波篠山城に行ってきました。

 丹波の国は兵庫県の中東部から京都府中部に位置します。織豊時代、信長は光秀にこの地の統治を任せました。丹波国の入り口が現在の京都府亀岡市。そこに光秀が築いた城が亀山城。光秀はそこから本能寺に向かいます(1582年本能寺の変)。

 丹波の国は面積こそ広大ですが山ばかり。平地はほとんどありません。調べてみると戦国時代末期の石高が26万石。つまり26万人くらいの民が住んでいたと思われます(一石一人と推定)。

 篠山城が築かれたのは1609年。西の抑えとして家康が築城を命じました。無駄なところがなく、堀と石垣がやけに立派です。石垣は近江の穴太衆(あのうしゅう:石工の専門集団)が普請したとのこと。こういう立派な建造物を見るといつも思います。「みんな必死に生きてきたんだな」とか「自分の考えていることなんて歴史的にみるとちっぽけだな」とか・・・。

 さて、兵庫には姫路城の他に、竹田城(朝来市:「天空の城」として有名)や今回ご紹介した篠山城などがあります。ただ、姫路城は別として、竹田城や篠山城は簡単には行けません。むしろ城巡りをしたいなら「近江の国(滋賀県)」をお勧めします。

 近江には安土城、彦根城、長浜城など有名な城がたくさんあります。しかも行きやすい。京都に行く機会があれば、ぜひ近江にも寄って頂きたいと思います。

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 安土城、ふもとから天守台に向かって坂道が続きます。道を挟んで真向かいに位置した秀吉宅と利家宅。両家(羽柴家と前田家)には家族ぐるみの付き合いがあったに違いありません。“ねね”と“まつ”の談笑が聴こえてきそうです。

 彦根城は国宝5城の一つです(他は姫路城、犬山城、松本城、松江城)。また明治天皇が取り壊さないように指示した名城としても知られています。

 長浜城は、秀吉が初めて城主になった城。秀吉は嬉しかったにちがいありません。城主になったことを嬉々として“ねね”に報告する秀吉。子どもの頃に観ていた大河ドラマ『おんな太閤記』には、そんなシーンがあったように記憶します。

 琵琶湖の湖北、長浜まで来ると、美濃(岐阜)や尾張(愛知)がぐっと近づきます。尾張にいた信長。美濃を支配して、近江を通り京に上る。当時の地理感覚が肌感覚に変わります。

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 思えば、歴史好きは悩みが少ないような気がします。それは自分がちっぽけな「点」のように見えているからでしょう。もう一つは、頭の中が別の時代を駆け巡っているからです。そのため、現在の悩みをすぐ忘れてしまいます。

 周囲からは呆れられるかもしれませんが、それが歴史好きのメリットです。

令和5年3月3日
院長 松本康宏

追伸:3月18日『第4回当事者の会』を開催します。ぜひ皆様ご参加下さい。詳しくは当院医療相談室まで。