あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
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元日はめずらしく一人で過ごしました。では一人で何をしていたかというと、『虚空(こくう)の人』という本を読んでいました。これは鈴木忠平さんが書いた本です。鈴木さんは元中日ドラゴンズの監督、落合博満氏の番記者。『嫌われた監督』という本が評価され有名になりました。今回上梓された『虚空の人』では元プロ野球選手の清原和博氏を追っています。
甲子園で一番の選手をあげるとすれば、僕より上の世代は「江川卓」と答えます。下の世代だと「松坂大輔」。そして私の世代だと「清原和博」です。
「王さん(王貞治)の記録を抜けるのは清原しかいない」、かつてそういわれていました。それだけ期待された清原ですが、ホームラン数こそ500本を超えたものの、結局タイトルを取れずに引退。その後は覚せい剤で逮捕され、現在、後遺症に悩まされていると聞きます。
「どうしてこうなってしまったのだろう」、私はこの本を読む前から彼のことが気になっていました。
清原は王さんのことをリスペクトしています。野球に対する向き合い方が自分とは違い過ぎる、そう語っています。しかし、本当にそうでしょうか。清原も必死だったはずです。王さんとの違いは「伴走者」がいたかどうか、それが一番大きかったのではないでしょうか。
高校に入るまで清原には「伴走者」がいました。看護師をしていた母親です。子どもの頃からキャッチボールやトスバッティングに付き合ってくれました。中学時代には、母が自転車に乗り、清原がそれを追いかけて毎日16㎞の道のりをランニングしていたと聞きます。しかし社会人になってからの清原にはそのような人がいたとは聞きません。一方、王さんには荒川コーチがいました。荒川コーチとの特訓は有名です。そういった違いが明暗を分けたように思います。
また、才能を生かしきれなかったのは、彼の気質が影響したのかもしれません。清原はサービス精神が旺盛。期待されると燃えるタイプです。しかしその分エネルギーを消費します。その点、松井やイチローは淡泊。感情がブレません。
『虚空の人』ではこんな発言がありました。「清原和博を演じるのも大変なんですよ・・・」。ソファーに寝そべりながら吐き捨てられた言葉。周囲からの期待を常に背負って生きてきたのでしょう。
清原の人生は今振り返ってみてもドラマチックです。それは彼が精一杯生きてきた証。そんな生き方にあこがれる一方、こうも思います。「あんまり気負わんほうがええよ」「俺みたいになったらあかん」「淡々とトライしてみたら」、清原はそう諭してくれているのではないかと。
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今年は気負わず淡々と色んなことに挑戦したいと考えています。
令和5年1月6日
院長 松本康宏