人と地域を
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2024/02/28

自殺予防ーその4

 みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

 

 今回のテーマは「自殺予防―その4」。このシリーズ、最終回です。

 

 自殺予防は専門家だけでできることではありません。多くの人に関わってもらい、それぞれの立場で「やれることは何でもやっていく」としたアプローチが必要です。一方、次のようにも考えました。秋田県は自殺率の高い県。だからウィークポイントを克服するための施策も必要なのではないかと。

 

 ではウィークポイントはどこにあるのか。それを探るため、秋田県の現状を①自殺に至った動機 ②年代ごとの自殺率 ③県内の地域ごとの自殺率、の観点からみていきます。

 

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 <自殺に至った動機>に関しては、平成28年から令和3年に至るいずれの年においても「健康問題」が一番多くなっています。これは全国共通の傾向。

 

 次に<年代ごとの自殺率>をみてみると、秋田県の場合、60歳までは全国とほとんど変わりません。しかし、60歳を超えると、全国平均とどんどん差が開いていきます。つまり、秋田県の自殺率が高い要因は、ここ「高齢者の自殺率」にあることが分かります。

 

 3つめの<県内の地域ごとの自殺率>(自殺率:10万人あたりの自殺者数)をみてみると、秋田市が最も低く15.8。能代・山本地区が一番高く29.3となっています。湯沢地区や大館・鹿角地区は県内平均(21.5)を若干下回っていますが、他の地区はすべて平均を超えています。つまり秋田市と秋田市以外では自殺率に大きな差があることが分かります。

 

 しかし、秋田市と秋田市以外では、高齢化率もかなり差があります(秋田市を1とした場合、秋田市以外の平均は約1.4)。また年齢別にみると高齢者の自殺率が高いことから、年齢比を補正すると両者の差はかなり縮まりそうです。

 

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 以上、3つの観点から、秋田県のウィークポイントを探ってきましたが、これといった具体的なものは明示できず、漠然と「秋田県に住む高齢者」としかいえません。

 

 さてこのことは、いったい何を意味しているのでしょう。本当に「高齢者の問題」と考えてよいのでしょうか。

 

 私は高齢者の問題というより、高齢者を支える側の問題(余力のなさ)とみました。そして、こうも考えました。ウィークポイントを漠然としか提示できないのは、まさに県民の「総合力」が不足していることを示しているのではないかと。

 

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 では、総合力を高めるにはどうすればよいのか。それは、みんながそれぞれの立場でやれることを目一杯やるしかありません。地域の集会や各種のボランティア活動だって自殺対策だし、(主に行政が行う)雇用対策や育児支援なども間接的な自殺対策です。

 

 また、今は精神的に余裕がない人も、回復すればぜひゲートキーパーになって欲しいと思います。力を合わせて総合力を高め、秋田県を「生きていきやすい場所」にしていきましょう(終)。

 

令和6年2月28日

院長 松本康宏

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