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2024/03/19

人生の選択

 みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

 

 この時期、進学や転職等で環境が大きく変わり、胸を躍らせている人が多いかと思います。一方、「これで良かったのかなぁ」と不安に感じている人もいるでしょう。そこで今回は、「人生の選択」について考えてみることにいたしました。

 

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 以下は架空の話です。自分が主人公になったつもりで「人生の選択」について考えてみて下さい。

 

 19世紀後半、フランスの首都パリは時代の先端を行っていました。当然、高級料理店も存在します。仮にその名前を『カフェ・アングレ』としましょう。その店を仕切っていた女性の料理長が自分です。

 

 順風満帆に見えた人生ですが、パリで革命が起きたことで暗転します。家族は殺され、店はなくなり、自身は命からがらデンマークに亡命。教会を営んでいた見ず知らずの姉妹を頼り、そこで家政婦として働くことに・・・。

 

 そんな生活が10年も続いた頃、パリの親戚から彼女(自分)に連絡が入ります。密かに購入していた宝くじが当たったのです。金額にして1万フラン。今だと数百万円の値打ちでしょうか。そのお金があれば、パリに戻ることも可能です。革命はすでに終わっていました。

 

 さて、あなただったら、このあと、どう行動されますか?

 

 「やっとパリに戻れる!」、大方の人がそう考えて帰宅の準備を始めるでしょう。一方、今いる場所に残る決断をする人もいると思います。「あのときの生活をもう一度」と思っても家族はすでにこの世にいません。昔には戻れないのです。その点、ここには自分を受け入れてくれる人がいます。「この地で人生を終えよう」、そう考えてもおかしなことではありません。

 

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 実をいうと、以上のストーリーはデンマークの映画『バベッドの晩餐会』からの引用です。

 

 映画の主人公バベッドの決断はこの地に残ることでした。残ると決めたら次に考えることは、賞金の使い道です。バベッドはそのお金で村人たちに『カフェ・アングレ』の食事を振る舞うことを思いつきます。

 

 実はその頃、村人たちの気持ちは荒れていました。仲たがいも日常茶飯事。しかし、バベッドがふるまった料理を食べると、不思議なことに村人たちの気持ちがほぐれてきます。「色々あったけど、自分の人生、これで良かった」「またみんなと仲良く暮らしていこう」、そう思い始めるのです。

 

 バベッドが頼った姉妹たちも同じでした。食事をしながら昔を懐古します。心を通わせた男性からの求婚を退け、宗教に捧げた人生。懐かしく思いつつも、そこに後悔はありません。観ている方は、「人生はあっという間に過ぎ去ってしまう」「やり直しはきかない」と感じるシーンです。

 

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 「あのとき、あちらの道を選んでいれば・・・」、誰しもそのような思いがよぎります。しかし、過去に行った選択が正しかったかどうかは実のところ分かりません。

 

 バベッドの料理は村人たち、姉妹、バベッド自身を幸せな気持ちにさせました。だから、過去も含めて人生すべてを肯定的に捉えることができたのです。

 

 これまで自分がしてきた「人生の選択」を後悔しても始まりません。バベッドの料理は、今幸せになることが大事だということを教えてくれているように思います。

 

令和6年3月19日

院長 松本康宏

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