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2024/05/14

家族

 みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

 

 今回は、山田洋二監督の映画を素材に「家族」について考えてみようと思います。

 

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 山田洋二監督というと、有名な作品がたくさんあります。国民的映画『男はつらいよ』シリーズもそうですし、私が大好きな映画『たそがれ清兵衛』も山田監督の作品です。そういえば、今年上映された『こんにちは、母さん』もそうでした。

 

 山田監督はずっと家族を描いてきました。その彼が描く家族には2つの特徴があります。その一つが「多様性」です。

 

 『男はつらいよ』シリーズを例に挙げると、寅さんと妹のさくらは異母兄弟。『とらや』を営んでいるのは寅さんの親ではなく、おじさん・おばさん。さくらの夫、博もしょっちゅう『とらや』に顔をみせます。他にも、準家族のような隣の社長。そして博とさくらの子どもも欠かせません。こういった多彩なメンバーで寅さんの「家族」は構成されています。

 

 また、登場人物のキャラクターも多彩です。寅さんは男の子がそのまま大人になったような性格(中心気質)。妹さくらはメランコリー親和型性格。隣のたこ社長は循環気質。まるで精神科の教科書のようです。

 

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 山田作品の二つ目の特徴は、取り上げる家族が「完璧ではない」ということです。例えば、『こんにちは、母さん』はこんなかんじでした(ネタばれあり)。

 

 一流会社に勤める息子(大泉洋)。友人をリストラしないといけない立場にいます。そのため、鬱々とした日々を送っています。加えて、家庭もうまくいっていません。妻とは別居状態です。そんななか息子は、いっときの安心感を求めてか、母(吉永小百合)のもとを訪ねます。

 

 東京の下町で一人暮らしをしている母親。不思議なことに、ときめいています。そのため、落ち込んでいる自分(息子)とは、波長が合いません。そのうち母には好きな人がいることが分かります。やるせなさを募らせる息子。ついに大きな決断をします。

 

 実は、山田監督自身も同じような体験をしていました。大学生の頃、母が好きな男を作って、家を出てしまったのです。両親の離婚に面食らった山田監督。その体験がこの映画にも反映されています。

 

 『こんにちは、母さん』では最終的に息子は実家に戻り、母と暮らすことになります。「世話になるね」という息子、それに対し「メソメソしていられないね」と返す母親。一瞬の合意(了解)です。これは家族でないとできません。他人なら無理です。なぜなら、家族は長い間離れていても「気持ちがつながっている」からです。ここに私は家族の第三の「特徴」を見つけた気がしました。

 

 この点について、もう一度山田作品で確認します。

 

 寅さんは普段旅に出ていますが、家族は寅さんのことを忘れてはいません。「お兄ちゃん、今頃何をしているのかしら」、妹さくらがつぶやきます。「寅のやつ、今頃どこで何をやってんだか」、これはおいちゃんの口癖です。

 

 『たそがれ清兵衛』もそうでした。清兵衛はすでにこの世にいません。幼かった頃の自分と父(清兵衛)との思い出。それを回想したのがこの映画です。

 

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 「色んな形があっていい」「完璧でなくていい」「離れていても気持ちがつながっていればいい」、これが山田監督の考える家族像なのだと思います。

 

令和6年5月14日

院長 松本康宏

 

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