2024/09/02
人と地域を
もっと健康に
これからの精神科医療
みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
人生振り返ってみると、やはり「集団(グループ)」から学んだことは大きかったと思います。学校、塾、部活。それぞれ優れた点がありました。
子どもの頃、家族を除いて、「大人の代表」といえば、それは学校の先生でした。「こういう人が大人なんだ」「大人はそう考えるんだ」。子ども心にもそう捉えていました。勿論、友達作りも学校です。友達との関係をとおして「人間関係」の基礎を学びました。
塾は塾で嫌なところではありませんでした。おおむね講師は若く、彼らが語る大学生活は魅力的に聞こえました。また、中学は荒れており、まともに授業が行われていなかったため、私はもっぱら塾で勉強をしていました。
部活では明らかに学校とは違う体験が得られました。チームを作って、目標に向かって進みます。「仲間の足を引っ張りたくない」「チームに貢献したい」、そういった気持ちが、自分のやる気を後押しします。喜びや悔しさを共有する体験も部活ならではのものでした。
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さて、精神科の話に移ります。
「これからの精神科医療は、依存症と発達障害」。誰が言い出したかは分かりません。しかし、10年ほど前から、ちょくちょく耳にするようになりました。それだけ困っている人がいて、需要があるということでしょう。
依存症と発達障害。私はまず、「依存症」に力を入れようと思いました。コミュニケーションが得意でやる気のあるスタッフに話を持ちかけます。その結果、初めに『Sunミーティング』が生まれました。その後も、勉強・宣伝・実践、試行錯誤が続きます。次第に利用する方が増え、依存症の拠点機関になることもできました。
始めたころと比べると体制はかなり充実しています。それでもまだ十分とはいえません。依存症は、とても多い病気です。アルコール・薬物・ギャンブル、依存対象はそれらに限りません。ゲーム依存や性依存で困っている人もたくさんいます。それゆえ、体制の拡充が望まれます。
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一方、「発達障がい」の治療体制に関しては、意図して取り組んだというより、自然と整ってきました。『思春期外来』が開設され、心理士が4名体制となり、『STEP(ステップ)』という支援プログラムも継続できるようになりました。なお、10月からは『発達障がい外来』もスタートします。
『STEP』に関しては、補足して説明する必要があるでしょう。このプログラムは、「発達障がい」の人が自己理解を深めたり、よりよいコミュニケーションスキルを獲得することを目的としています。具体的には、ワークブックを用い、その回のテーマにそって、ディスカッションやロールプレイを行います。月2回のペースで行われ、計20回で完了。
当院は昨年からこのプログラムを導入しました。9月11日からは、第Ⅱ期目をスタートします。
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グループワークには様々な利点があります。同じ体験をしている人の話を聞くことができること、困っているのは自分だけではないと認識できること、一人では頑張れないこともみんなでならやり遂げられること、回復を信じられること、等など。
『Sunミーティング』や『STEP』は、瞑想中に思い浮かんだことを発言しあう会ではありません。場所として例えるなら、気楽に通える学校や塾や部活のようなところです。
関心を持たれた方は、一度、見学してみませんか。多くの方のご参加を期待しています。
令和6年9月2日
院長 松本康宏