2024/09/04
人と地域を
もっと健康に
元気をくれた作家
みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
ここのところ、私は3つの地点で生活しています。自宅と職場と“ツルハドラッグ”です。若い頃は、「色んなところに行ってみたい」「色んな人と会ってみたい」。そう考えていました。しかし最近は、狭い範囲で内向きに暮らしています。
そんななか、活気あふれる人物と出会いました。以前、『秀吉の晩年』でもご紹介した、歴史作家の今村翔吾氏です。今回、彼の講演会が秋田市で催され、それを聞きに行ったというわけです。
歴史作家の話ですから、通好みの“しぶい話”と思いきや、内容はすべて現代、本人の体験談でした。話し慣れている面もあるのでしょう。いや、もしかすると、実家がイベント屋さんだったことも影響しているのかもしれません。お笑い芸能なみのトークで、始終、楽しませてもらいました。
今村氏は、現在40歳。30歳まで、ダンスのインストラクターをしていたそうです。その後、作家に転じ、本を出すのと同時に、多くの賞を受賞してきました。今は作家をしながら、書店を3つ経営。直木賞を受賞したお礼をいうため、全国の書店を旅して回るなど、行動力もハンパない人物です。講演のなかでは、何度も“挑戦”という言葉を耳にしました。
「司馬遼太郎に対抗して坂本龍馬を描きたい」「浅田次郎の背中が見えてきた」「目標は東野圭吾」。“ビッグマウス”と断った上で、発言します。でも、今の日本には、これくらい元気のある人が必要なのではないでしょうか。私は頼もしく思いました。
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講演会場で購入した『教養としての歴史小説』(今村翔吾著)。その本からも彼の人柄が伺えます。
<かつて私のロールモデルの一人は坂本龍馬でした。龍馬の享年(33歳)を超えたときは「自分は龍馬になれなかった」「まだ何もしていない」とショックを受けたのを覚えています。一方で、「いよいよ何かやらなければ」と決意するきっかけにもなりました。「現在と当時では平均寿命が違うから、まだ遅すぎることなんてない」と都合良く解釈し、自分を奮い立たせました。龍馬の享年を意識することで、作家への道を踏み出せたともいえます>p273
<こんなふうに、私は偉人が何歳のときにどんな業績を上げていたのかをけっこう意識しています。恐らく、次の大きなタイミングは信長の享年(49歳)でしょう。その年まで自分は何ができるかを考えながら、自分を反省したり鼓舞したりしていくのだと思います>p273
実をいうと私も、ときどき歴史上の人物が何歳で亡くなったのか、確認しています。ただそれは、感慨に耽るためであって、自分を鼓舞するためではありません。その点、今村氏は違います。龍馬や信長と自分を比較して、「もっと頑張んなきゃ!」と自身を叱咤激励するわけですから、やはり「熱い人物」なのでしょう。
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今回の講演の内容は多岐に渡りました。なかでも今村氏が一番伝えたかったのは、世の中から「本屋さんをなくしたくない」ということだと思います。私も同感です。町の中から本屋さんが消えていくのは本当に寂しく感じます。
今村氏に元気をもらった私は、生活拠点に、「本屋さん」を付け加えたいと考えています。
令和6年9月4日
院長 松本康宏