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2024/10/04

精神障がい者の理解ーその4再掲

 みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

 

 今回は、『バイオ・サイコ・ソーシャルな診かた』についてお話しいたします。これは、①生物学-②心理学-③社会学(バイオ・サイコ・ソーシャル)、この3つの観点から患者さんを理解するということです。

 

 この中の「生物学的な診かた」というのは、聞き慣れないかもしれませんが、「脳の病気として診る」と考えて頂ければ良いでしょう。

 

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 では実際に、3つの観点を用いて、「うつ」を診ていきたいと思います。

 

 うつ状態の人が、抗うつ薬を飲んで休んでいると、数ヶ月してすっかり良くなった。そういった場合は、「脳の中で伝達物質(例えばセロトニン)が不足していた」という見立てが成り立ちます。すなわち、その場合の「うつ」は、①の「生物学的な面」が大きかったと言えそうです。

 

 一方、薬を飲んで休んでいても全然良くならない。実は気持ちの深いところに葛藤があり、そのあたりを話しあっていくうちに、段々、気持ちが楽になってきた。そういった場合は、②の「心理的な面」が大きかったと言えるでしょう。

 

 また、うつ状態といっても、過重労働で疲弊しきっている人や経済困窮から「うつ」を呈している人は、③の「社会的な面」が大きいケースと言えます。

 

 このように、一言で「うつ」といっても、<生物学的な面が大きい人・心理的な面が大きい人・社会的な面が大きい人>がいるわけです。

 

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 なお、この中で、医療者にとって一番手薄になりがちなのが、③の社会的な面へのアプローチ(支援)です。

 

 そもそも医療というと、医者と看護者あるいは医師と心理士がチームを組み、患者さんの支援にあたるという固定観念があります。しかし、忘れてならないのは、ケースワーカーの存在。

 

 幸い、総合病院と比較して、精神科の病院はケースワーカーが多く配置されています(当院の場合、13名)。彼らは社会資源に関して知識が豊富です。彼らの力を生かさない手はありません。

 

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 なお自殺や児童虐待といった問題も、視点が医学モデルに傾き過ぎです。

 

 「自殺や児童虐待をいかに減らすか」という話になると、得てして、精神科医やカウンセラーが意見を求められます。すると、どうしても「病気」や「こころ」の話になってしまいます。しかし、いうまでもなくこういった問題には「生活苦」が大きく影響しています。医者や看護者にとっては専門外かもしれませんが、ソーシャルな視点も忘れないようにしたいものです。

 

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 このように、患者さんの問題を把握し、それに見合った支援をしていく上で、『バイオ・サイコ・ソーシャルな診かた』は、必要不可欠な概念です。

 

 ただこれを知っていれば、実際に支援ができるかというと、決してそういうわけではありません。といいますのも、この概念は、「支援の仕方」までは示してくれていないからです。

 

 そこで次回は、「支援の仕方」についてお伝えしたいと思います(続く)。

 

令和3年5月7日(令和6年10月4日再掲)

院長 松本康宏

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