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2024/11/22

医療の原点

 みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

 

 今回は、医療と芸の関係についてみていきます。

 

 「説明」「保障」「元気づけ」「環境調整」「直面化」「訓練」・・・精神療法にはさまざまなやり方があります。私はこのなかで最も難しく、最も重要なのが「元気づけ」だと考えています。念のためお伝えしておくと、精神療法は精神科の専売特許ではありません。医療関係者ならみんなやっていることです。

 

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 先月、西田敏行さんが亡くなられました。非常に残念です。西田さんは、元気をくれる俳優でした。「人を喜ばせたい。そして自分も喜びたい」。それが西田さんの「原点」だったようです。

 

 俳優といっても様々です。二枚目もいれば、コメディアンふうの人もいます。私は、後者のタイプに惹かれます。昔でいうと渥美清さん、それからドリフの志村けんさん、そして西田敏行さんのような人物です。

 

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 「元気づけ」といえば、その方法の一つとして「笑い」が頭に浮かびます。

 

 笑いには、「カタルシス」と「元気づけ」の効果があります。両者は別個のものではありません。気持ちがすっきりすると、大抵やる気が湧いてきます。

 

 私が好きな、サンドウィッチマンや中川家の「お笑い」は、カタルシスの効果が大きいように思います。夜、彼らのコントを観て、ゲラゲラ笑います。そして、すっきりした気分で就寝。彼らのコントはストレス解消に最適です。

 

 他方、志村けんさんの「笑い」は、すっきりするだけでなく、ホッとする効果もあったように思います。

 

 私が子どもの頃、土曜日も学校がありました。待ち遠しかった土曜の夜。『8時だョ!全員集合』を観ます。観た後、なぜかホッとしました。

 

 ホッとしたのは、明日が休みということもあったでしょう。ただ、それだけではなさそうです。おおげさにいうと、志村さんは、バカな姿を見せることで、子どもたちに「安心感」を与えました。「大人だって子どもとおんなじだよ」というメッセージです。

 

 では、渥美清さんや西田敏行さんの芸には、どのような効果があったのでしょう。こちらは人生を「肯定」する作用があったと思います。

 

 さきほど、昭和の小学生について触れました。実は、大人も同じでした。当時のサラリーマンはほとんど休みがなく、息を抜けるのは、盆と正月くらい。そんなとき、元気をくれたのが、渥美清さんの『男はつらいよ』や西田敏行さんの『釣りバカ日誌』です。

 

 観客は映画を観て、思います。「ああ、面白かった!」「『寅さん』や『ハマちゃん』も頑張ってるなぁ」「いいことも悪いこともあるけど、それが人生なのかもしれない」「まぁ、明日から頑張るか」。

 

 映画というと、得てしてシリアスで複雑な作品ばかり評価されます。しかし、本当にすばらしい作品とは、観た人が前向きになれる映画ではないでしょうか。

 

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 以上、芸(笑い)の効用についてみてくると、芸能人も医療者も同じようなことを追求している気がします。ただ、これは考えてみれば当然のことかもしれません。なぜなら、芸の原点が「人を喜ばせる」ことなら、医療の原点は「人を元気づける」ことだからです。

 

令和6年11月22日

院長 松本康宏

 

追記:今年のブログはこれで最後です。一年間、ご愛読ありがとうございました。少し早いですが、来年がみなさまにとって良い年となりますようお祈り申し上げます。

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