2025/05/02
人と地域を
もっと健康に

絵画の力
みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
先日、『侍タイムスリッパ-』という映画を鑑賞しました。低予算で製作されたにもかかわらず、見ごたえのある内容でした。練りに練って作られたシナリオ。映画にかける情熱とチームワークのよさ。そういったものがひしひしと伝わってきます。なお、この映画からは上昇志向のようなものも感じられました。携わったスタッフや監督は、今後さらにいい仕事をするような気がします。「これぞ芸術作品!」。そう思わせる大作を作り出す日も近いのではないでしょうか。
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2月だったでしょうか、用事があってある病院を訪ねました。見渡すと、すばらしい絵がたくさん飾られています。私はうらやましく思いました。優れた病院には「芸術力」が備わっています。先日見学させてもらった県外の病院もそうでした。あらゆるところにアートが施されています。それが利用者の気持ちを和ませ、職員の気持ちを豊かにしていることはいうまでもありません。
『精神科医療アンサンブル』(高坂要一郎著)という本があります。多くの人に読んでもらいたい良書です。徳島県にある『杜のホスピタル』。同院の理事長兼院長である著者は、精神障害者を治療する上で、芸術療法を積極的に取り入れています。精神障害を「エントロピーが増大した状態」と捉え、芸術の力で乱れた状態を整えようとしているのです。ちなみに、エントロピーとは乱雑さ、「無秩序な状態の度合い」を示します。
著者はいいます。<院内の絵画や彫刻などから何を読み取るかは人それぞれです。興味をもつ、もたないはその人の個性によります。ですから、作品をどう受け止めるかの正解はありません。とはいえ、エネルギーに満ちた芸術作品が患者のエントロピーを減らしているのは事実です。p144>
なお、この本によると同院には多くの絵と美術品が飾られているようです。その部分の記載も取り上げておきます。<私たちの病院の階段の踊り場にはカンディンスキーの『With and Against(共存と対峙)』やパウル・クレーの『Adventure-ship(冒険の船)』、ゴッホの『First steps(最初のステップ)』といった、海外の有名な画家の作品に親しめるような展示物のほか、松山市在住の絵本作家、木谷佳子さんの絵『Imagination』を壁一面に掲げています。p144>
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偶然なのか必然なのかは分かりませんが、ここのところ立て続けに芸術力を兼ね備えた病院から刺激を受ける機会がありました。それもあって、「当院も絵画を飾ったりできないかなぁ」との思いを強めています。もちろん、予算に限りがあるため、少しずつ集めていくしかありません。しかし、これはこれで楽しい作業のような気がします。『侍タイムスリッパ-』のスタッフだって、限られた予算のなか工夫を凝らし、いい映画を作っていました。私たちも、彼らを見倣って、「芸術力」を高めるべく、できる限りのことをしていきたいと考えています。
令和7年5月2日
院長 松本康宏