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2026/03/06

それはどんな”うつ”なのか

 みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

 

 昨今、「うつ」になる方が増えています。また、うつに関する情報もよく耳にするようになりました。ただ、個人的には「うつ」ほど、説明するのが難しいものはないと考えています。なぜなら、色んなタイプがあるし、対処法もそれなりに異なるからです。

 

 そこで今回、5つのケースを提示し、色んな「うつ」があることやその対処法について(少しではありますが)お伝えしたいと思います。

 

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 ①30代のシステムエンジニア。これまで月に100時間を超える残業をこなしてきました。しかし、数か月前、異変が生じます。眠れなくなったのです。次第に集中力を欠き、ミスを連発。ついには仕事を休むようになりました。精神科で治療を受けていますが、2年経過した今も本調子とまでいきません。

 

 ②50代女性。他者配慮性があって秩序を重んじるタイプです。その彼女が、1か月ほど前からふさぎこむようになりました。言葉もなかなか出てきません。そのため入院となりますが、2カ月を過ぎたあたりからでしょうか。気分が改善してきたようです。半年を経た今、すっかり元気になり、従来通り家事をこなしています。

 

 ③40代男性。小太りで頭髪の薄くなった彼は、1年前「うつ」を経験しました。今はすっかり回復してハツラツとしています。元気のない部下には、熱のこもった口調で「うつを経験して回復した俺は怖いものなし!」「きみも必ず良くなる!」と語りかけます。

 

 ④30代女性。医療現場で必死に働いてきました。落ち込みがちな患者さんを励まそうと声がけを怠りません。ところがある時、自分を糾弾した投書が明るみに出ます。「患者の気持ちも分からず、余計なことをいうな」といった内容でした。上司からはそのことで叱責も受けます。結果、彼女はうつになって退職。1年経った今も仕事をできずにいます。

 

 ⑤20代女性。「さち」の薄い人生です。親とは疎遠。虚しくて仕方がない毎日。同居している男性からは暴力を振るわれているようです。そんな状況のせいか昼間から飲酒をしています。あるクリニックを受診したら、「うつ病」と云われました。

 

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 ①~⑤について、それぞれ見ていきます。

 

 テレビ等で「うつ」の特集があると、よく取り上げられるのが①のケースです。過重労働により消耗したタイプといえるでしょう。月の残業が100時間ともなると、いくら生活を工夫しても、睡眠が足りなくなります。睡眠不足が慢性化すれば「うつ」になってもおかしくありません。絶対に避けるべき働き方です。なお、休養するとすぐに良くなる人もいますが、なかなか治らない人がいることも知っておくべきでしょう。

 

 ②はいわゆる「内因性のうつ病」。メランコリー親和型と呼ばれたりもします。昔、「うつ病」といえば、このタイプを指しました。この場合、休養と薬物療法が必須です。気分転換は勧められません。

 

 ③は双極性障害(躁うつ病)を抱えた人かもしれません。「うつを経験して回復した俺は怖いものなし!」「きみも必ず良くなる!」とした発言から、気持ちが大きくなっている可能性があります。仮に双極性障害だとすると感情調節薬を使用しなければなりません。このように、うつ病と双極性障害では使う薬が違ってくるため鑑別が重要です。

 

 ④は医療機関だと適応障害もしくは急性ストレス反応と診断されるでしょう。また、なかなか復職できずにいるところをみると、「燃え尽き症候群」あるいは「出社恐怖」という見方もできそうです。

 

 医療や教育に携わる者の労働環境は決して良いものではありません。それでも頑張れるのは、自分の仕事が患者さんや生徒たちの役に立っていると思えるからです。ところが今の時代、感謝されるどころか、クレームに遭うことが増えています。すなわち “やるせなさ”を募らせやすい環境と言えるでしょう。看護師や学校の先生に「燃え尽き症候群」が多いのは、こういったことも影響しているように思います。

 

 なお、本ケースの場合、「出社恐怖」に陥っている可能性も考えておいた方がいいでしょう。長期間“うつ”で仕事を休んでいる人のなかには、エネルギー不足というより、出社するのが怖くなっている人が少なくありません。その場合には、薬物療法だけでなく、(転職という選択肢も含めて)恐怖心を減らしていく方法を考える必要があります。しかし、精神科医療の実情を見ると、時間的余裕のなさから、そこまでできていないことが多いように思います。

 

 ⑤はパーソナリティ障害あるいは複雑性PTSDかもしれません。薬を飲んでいるだけでは良くならないでしょう。

 

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 以上、5つのタイプを提示しましたが、「うつ」のタイプはこれだけに留まりません。他にもたくさんあります。

 

 だから、自分の「うつ」が本に書かれているものと一致するとは限りませんし、また、治りが良くない場合には、どんなタイプの「うつ」なのか、再考してみるのも一つの手だと思います。

 

 一方、精神科医の私は、ブログを書きながら「もっとていねいに診なければ」との思いを強めた次第です。

 

令和8年3月6日

院長 松本康宏

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