2020/05/18

パピヨン

 皆さま、自粛が求められる中、いかがお過ごしでしょうか。

 私は読書をしたり、DVDを観て過ごしています。

 先日、ビデオ屋で目に留まったのが映画『パピヨン』のリメイク版。オリジナルを気に入っている私は、早速借りて観てみました。しかし、自分にとって一番印象的だったシーンが変わっていたのが残念・・・。

 ここでちょっとオリジナル版の『パピヨン』について紹介させて下さい。

 パピヨンとはフランス語で「蝶」という意味です。この映画の主人公は、胸に蝶の入れ墨をしていることから、そう呼ばれています。元々、金庫破りの彼ですが、仲間からの裏切りにあい、殺人の罪を着せられ、母国フランスから南米のギニアに送られます。そこでの囚人生活は凄惨を極めます。労働は厳しく、囚人は人として扱われません。そんな中、パピヨンは何度も脱獄を試みます。そして、捕まる度にさらに過酷な状況へ・・・。

 オリジナル版は、1973年に制作された古い映画。ただ私が観たのは比較的最近です。この映画を劇場で鑑賞できたのはラッキーでした。10年程前、東宝シネマズで過去の名作を上映していたのです。劇場だと、あっというまに登場人物に同化できます。私もいつのまにか、投獄された気分。パピヨン同様、「どうにかしてここを出たい」という気持ちが湧いてきました。

 パピヨンを演じているのは、スティーブ・マックイーン。彼の代名詞は「自由を求める不屈の男」です。しかし、彼が活躍した50年前と今とでは社会もずいぶん変わりました。抑圧が減ったせいか、「自由を求める不屈の男」といわれても、多くの人がピンときません。

 私はよく、「どうしてこの映画を観たのだろう」とか、「どうしてこの本を選んだのだろう」と夢想します。今回は、コロナによる自粛で窮屈な感情を抱いていたからというのがおそらく一番の理由。それともう一つは、市民が政府に強い規制や指示を求める今の世相に何か違和感があったからだと思います。

 「パチンコに行こうが、サーフィンに行こうが、俺の勝手だろ!」という人も問題ですが、政府に何でも決めてくれという人もどうかと思います。両者は表現型こそ違いますが、根っこは同じ。自分で考えて自分で責任を取るという思考が足りないのです。

 話が脱線しました。映画に戻ります。

 冒頭で、「印象に残ったシーンがある」と記しました。それは次のようなものです。

 ある時、独房の中でパピヨンは夢をみます。砂漠の中をトボトボと歩くパピヨン。行く先に裁判官と陪審員が見えます。裁判官がパピヨンに対し「お前は有罪だ」と告げます。それに対しパピヨンは「俺は人を殺したりなんかしていない、無実だ」と抗います。しばし言い争った後、最後に裁判官はこう告げます。お前はこの世で一番ひどい罪を犯したのだと・・・。

 では、裁判官がパピヨンに告げた「一番ひどい罪」とは、いったい何であったのか。

 それは、「人生を無駄に使ってしまった罪」というわけです。そう告知されたパピヨンは納得し、こうべを垂れます。私もこのシーンに「ゾクッ」としました。自分がそう言われた気がしたからです。

 ギアナに流されれば、まず故国には戻れません。繰り返しますがパピヨンは元々金庫破り。それ以外にも悪事を働いてきたと思われます。だからこそ、「人生を無駄に使ってしまった」との思いが強かったのでしょう。

 自由を奪われて、初めて、大事なことに気付いたパピヨン。コロナ禍の現状は、不自由であると同時に、大事なことに気付くチャンスなのかもしれません。

令和2年5月18日
院長 松本康宏